木魚歳時記 第1033話

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棺桶はお一人ご一人様である  (石川 洋)

 ロマンチストでありダンディストで知られる三鬼は、女性にまつわる話題に事欠かかなかったようです。放蕩(ほうとう)、女たらし、そんなイメージをぼくはもっていました。

  中年や遠くみのれる夜の桃 三鬼

 ぼくは揚句をかなりエロチックに解釈していました。しかし、三鬼は自解で「中年というのは何歳から何歳までをいふのか知らないが、一日でいえば午後四時半頃だ。さういふ男の夜の感情に豊かな桃が現れた。遠いところの木の枝に。生毛のはえた桃色の桃の実が」。女性に対する人並みはずれた気づかい、女性に対するやさしさ、そんな三鬼像が浮かびます。三鬼はいわゆる「こまめ・女たらし」ではなかったのです。

    蓮池の底を覗いてみたくなり