木魚歳時記 第51話

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満月と 離れ難くて はしご酒

 「真之介さま小雪は遠くにいってしまいます・・・」と、いつも、笑顔を絶やさなかった、小雪さんからの手紙が届きました。「住み慣れたところですから…もうすこしいたかった。みんなと別れるのは寂しい、それと、真之介さまとも・・・」と記されてありました。

               *
 北の国にも遅い春がやってきて、さくらの蕾がふくらむころ。季節はずれの淡雪が降りました。そのままでは蕾が冷たかろう、淡雪も切なかろう。と、蕾を被った淡雪を手にとると、みるみる、淡雪は手のひらの中で溶けてしまいました。
 季節外れの淡雪があって、遅咲きのさくらの花に積もるとき、北の国の人たちはいいました「<花隠しの雪>がやってきた」と。そして、さりげなく見守ってあげるといいます。
 「会者定離」(えしゃじょうり)とは、「出会いがあれば別れもくる」と、そういうことです。そのように書いて小雪さんに送りました。
  「さりげなく 渋茶で飲みこむ 本音かな」