木魚歳時記第4025話

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 彼は久安(きゅうあん)二年、安芸守となったとき以来、厳島神社を伊勢大廟と並ぶべきだという者の言を信じて異常に崇拝して、これを氏神の如くに祭り、奏して修理を加え、百二十間の回廊を造った。山にかかり海に臨んでよく自然と調和融合した名建築である。
(佐藤春夫『極楽から来た』)695

      冬の夜のかんらからからコツプ酒

 「ボクの細道]好きな俳句(1771) 大石悦子さん。「春の夜の細螺の遊びきりもなし」(悦子) 細螺(きさご)とは小さな巻貝のことです。ガラスが出回る前にはおはじきとして使われたようです。こうして、春の夜の「ひとり遊び」は、刻(とき)の経つのを忘れたように過ぎてゆきます。

 「庭のなか」(ルナール『博物誌』) おやすみ

 

木魚歳時記第4024話

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(四)清盛は平治の乱の導火線となったように信西の姻戚として、当代日本一のこの学者との交際によって多方面の高い見識を養い、また法性寺関白忠通の嫡孫基実を女婿として、名実ともに最高の廷臣たるに足る身につけて置いてあった。彼はすくなくともその時代で大一等の文化人であった。(四)
(佐藤春夫『極楽から来た』)694

         色鳥と酒と肴とキャッシュレス

  「ボクの細道]好きな俳句(1770) 大石悦子さん。「雁帰る攫はれたくもある日かな」(悦子) 雁(かり)は晩秋に渡って来て、子育てをして春には北国に帰ります。わたしを「さらって」幸せの国へつれてくれる素敵な方は現れないでしょうか! と、作者はいうのです。

 庭のなか4 木苺(きいちご)・・・なぜ薔薇(ばら)には棘(とげ)があるんだろう。薔薇の花なんて、食べられはしないわ。 いけすの鯉・・・うまいこと言うぞ、だから、俺だって、人が食いやがったら、骨を立ててやるんだ。
薊(あざみ)・・・そうねえ、だけど、それではもう遅すぎるは。

 

木魚歳時記第4022話

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 翌年の崩御もその素因はこの時につくったものかも知れない。なにしろ、この女院が三十五歳の女盛りでの崩御は、日を経ても御膳さえお手も触れさせぬ上皇の御悲嘆はもとより、平家にも容易ならぬ損失であった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)693

    小鳥来る葉と柚葉は従姉妹なり  葉(よう)柚葉(ゆずは)

 「ボクの細道]好きな俳句(1769) 大石悦子さん。「五十なほ待つ心あり髪洗ふ」(悦子) 黒髪はをんなの命。これはよく聞くことばです。たとえば「ゆるやかに着てひとと逢ふほたるの夜」(桂信子) の作品もあります。そして「一本の白毛おそろし冬の鵙(もず)」(桂信子)まで到達するようです。

 庭のなか3 薔薇(ばら)・・・まあ、なんてひどい風!                添え木・・・わしが付いている。

 

木魚歳時記第4021話

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 わらじをつけて徒歩四十日の後、折からの大雨の中を神前に、胡飲酒(こんしゅ)の舞を熊野本宮に奉納して、舞いおさめた時には、御衣装もしとどにぬれていた。その熱情的にまたすさまじいまでの意力のほどもしのばれる。
(佐藤春夫『極楽から来た』)692

       竜淵に潜む東寺秘伝の風信帖

 「ボクの細道]好きな俳句(1768) 大石悦子さん。「猪屠るかはるがはるに見にゆきぬ」(悦子) 猟師さんがイノシシを射止めたというのです。その解体でしょうか? 残酷なようですが「怖いもの見たさ」の誘惑には勝てません。伝え聞いていろんな人が様子を見に来ます。

 庭のなか2 花・・・今日は日が照るかしら。
       向日葵(ひまわり)・・・ええ、あたしさえその気になれば。
       如露(じょろ)・・・そうは行くめい。おいらの料簡(りょうけん)ひとつで、雨が降るんだ。おまけに、蓮果(はちす)でも外してみろ、それこそ土砂降りさ。

 

木魚歳時記第4020話

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 彼女は上皇の高野御幸にも厳島(いつくしま)神社御幸の海路のおん道行にもいつも必ず御同伴であったが、女院三十四歳の時、熊野詣での祈りの御様子が、この女院の並々ならぬ性格をあきらかに浮彫りしている。
(佐藤春夫『極楽から来た』)691

    「いいねっ!」 だけで食ふのか零余子飯  零余子(むかご)

   「ボクの細道]好きな俳句(1767) 大石悦子さん。「むささびに一夜雨風それから春」(悦子) 嵐にのまれ、迷い込んだ「むささび」(一夜だけでも)にも軒先を貸してあげましょう。明日、天気になれば、ムササビのために、また、春の夜が待ち受けているのですから。

 庭のなか1 鍬(くわ) サクサクサク・・・稼(かせ)ぐに追いつく貧乏なし。
       鶴嘴(つるはし)・・・同感! (ルナール『博物誌』より)
  

 

木魚歳時記第4019話

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 こういう賢明な婦人であったから御白河院の複雑な気心もよく汲み取って仕え、人なっこいこの帝王の心をすっかりとらえて、二条天皇の御生母の懿子も、似仁王や式子内親王などの生母成子も、この滋子の殊寵(しゅちょう)にはとてもおよばなかった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)690

    コスモスを一本挿して愛でにけり 

 「ボクの細道]好きな俳句(1766) 大石悦子さん。「口論は苦手押しくら饅頭で来い」(悦子) 口論では何の改善策にもつながらない! だから嫌いです。向かって来るなら体で来い! わかります。ボクも「ぐちゃぐちゃ」やりあってきた(口論)タイプです。ということは、喧嘩に弱い(汗)。

 鯨(くじら)1 コルセットを作るだけの材料は、ちゃんと口の中に持っている。が、なにしろ、この胴まわりじゃ・・・(ルナール『博物誌』より)