木魚歳時記 第3267話

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 「今日のことば」
    固(もと)より急ぐ旅でないから、
    ぶらぶら七曲りへかかる。
    たちまち足の下で雲雀の声がし出した。
    せっせと忙しく、絶間なく鳴いている。
    山を越えて落ちつく先の、今宵の宿は
    那古井(なこい)の温泉場か。
     (夏目漱石『草枕』)抄3

 「ボクの細道」好きな俳句(1018) 藺草慶子さん。「目つむれば何もかもある春の暮」(慶子) 「目つむれ」。これでいろんなことが想像できます。さて「俳句はなるべく具体的に」と教えられました。それはその通りだと思います。しかし、読者が、いろんな読み方ができるのもまた楽しいものです。とりわけ、うきうきするような「春の暮」に瞑想をするなど粋なものです。

       綿虫のふはりふはりと雲母坂 

                     雲母(きらら)

木魚歳時記 第3266話

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 「今日のことば」
    住みにくさが高じると、
    易い所に引き越したくなる。
    どこへ越しても住みにくいと
    悟った時、詩が生まれ、
    画(え)が出来る。
     (夏目漱石『草枕』)抄2

 「ボクの細道」好きな俳句(1017) 藺草慶子さん。「もつと軽くもつと軽くと枯蓮」(慶子) 枯蓮(かれはちす)は無残です。敗荷(やれはす)の別名がぴったりです。それを「もつと軽くもつと軽く(プラス方向)」に詠うところが秀逸です。あたりまえのことを、あたりまえに詠うのは容易です、・・しかし、それでは「ただごと」俳句に終わります。わかっていますがこれがむつかしい(汗)。

     「ゆず」絶唱「栄光」の歌帰り花

木魚歳時記 第3265話

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 「今日のことば」
    智に働けば角が立つ。
    情に棹させば流される。
    意地を通せば窮屈だ。
    とかく人の世は住みにくい。
     (夏目漱石『草枕』)抄1

 「ボクの細道」好きな俳句(1016) 藺草慶子さん。「学校へ来ない少年秋の蝉」(慶子) 昔から「学校へ来ない少年」は居たのでしょうか? 居たと思います。実は、ブログ作者もズル休みして落第(小3)をしました。けれど「秋の蝉」のわびしさは残っていません。御所、鴨川、寺の境内を駆けめぐり、虫捕り、魚獲り、パンツ盗り(まさか)などなど、楽しい思い出が昨日のことのように思い出します。ボクは幼少より「ヘン」でした。

      落ちさうでこれが落ちない冬の蝶

木魚歳時記 第3264話

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 「今日のことば」
    「こうなれば、もう誰も
    哂(わら)うものはない。」
    内共は心の中で呟いた。
    長い鼻をあけ方の秋風にぶらつかせながら。
     (芥川竜之介『鼻』)抄19 おわり

 「ボクの細道」好きな俳句(1015) 藺草慶子さん。「鶏小屋の近くに吊す水着かな」(慶子) こうした視点はめずらしい。なぜなら、鶏小屋は羽毛が散乱し埃っポクて綺麗なイメージでないから・・そんな処に濡れた水着を干すでしょうか? この常識を破る視点が凄いのです。凡人は(ボクのように)、俳句らしく見せようと、干場について美辞麗句を「こねくり」ます。そして「ただごと」俳句に終わるのです(汗)。

      十二月ここを先途とナムアミダ

 

木魚歳時記 第3263話

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 「今日のことば」
    内共は慌てて
    鼻へ手をやった。
    手に触るのは、昨夜の短い鼻ではない。
    上唇の上から、
    顎(あご)の下までの長い鼻である。
     (芥川竜之介『鼻』)抄18

 「ボクの細道」好きな俳句(1014) 大木あまりさん。「逝く猫に小さきハンカチ持たせやる」(あまり) ボクは、犬、猫、鳩、カラス、十姉妹など、たくさんのペットを飼ってきました。金魚の卵も孵(かえ)しましたが水道水を入れて全滅させ、ひよこに暖房器を与えて逝(い)かせたり・・つまり「小さきハンカチ持たせやる」(掲句)ような心根の優しさがボクにはありません。

      冬ざるる魚街道を北へ行く 

                   魚(とと)  

木魚歳時記 第3262話

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 「今日のことば」
    翌朝、内共が眼をさますと、
    庭は黄金を敷いたように明るい。
    禅智内共は深々と息をすいこんだ。
    ほとんだ、忘れようとしていた、
    ある感覚が帰ってきたのは
    この時である。
     (芥川竜之介『鼻』)抄17

 「ボクの細道」好きな俳句(1013) 大木あまりさん。「助手席の犬が舌出す文化の日」(あまり) なんのことはないよく見かけることです。なぜなら「舌出す」のは犬族の通常の習性ですから。ならば、なぜ魅かれるのか(この作品に)? それはやはり「文化の日」に尽きるでしょう。ところで「文化の日」が設けられたのは? いつ? その趣旨は? などなど忘れてしまいました。

      御婆の手塩にかけた酸茎漬 

                酸茎漬(すぐきづけ)

木魚歳時記 第3261話

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 「今日のことば」
    内共は、鼻の短くなったのが、
    恨めしくなった。
    するとある夜のことである。
    寝つこうとしても寝つかれない。
    ふと、鼻がむず痒(かゆ)いので
    手をあてると、熱気がある。
     (芥川竜之介『鼻』)抄16

 「ボクの細道」好きな俳句(1012)。 大木あまりさん。「老人のさすられどほし日向ぼこ」(あまり)。「さすられどほし」とは? 誰に? ボクなら、老人(性別に関係なく)なら御免蒙りたい(汗)。いっそ、昔にタイムスリップして、橋本多佳子さん(写真で見た)のような女流俳人と、日向(ひなた)ぼこしながら、背中を「さすり」「さすられ」ながらの俳句談義など交わせれば至福のかぎり・・ああ、夢(妄想)でした(汗)。

      あのころはみんなそろつて七五三