木魚歳時記 第3260話

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 「今日のことば」
    「人がその不幸を、
    どうにかして、切り抜けると、
    こんどは、(見ている)こちらが
    なんとなく物足らない心もちがする。」
    その人に敵意すら抱く。
     (芥川竜之介『鼻』)抄15

 「ボクの細道」好きな俳句(1011) 大木あまりさん。「柿むいて今の青空あるばかり」(あまり) スーパーで買って来た柿を剥いて食べているのではない。ボクのお寺にも柿の古木がありました。竹竿のさきを割り柿の実を枝ごと挟み取ることは誰にも負けない腕前でした。大物をネライ手元に引き寄せ、青空を見上げながらひんやりした柿に食らいつく美味さはかくべつでした。

      まなかひに木枯し二号坐りたり

 

木魚歳時記 第3259話

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 「今日のことば」
    「前にはあのように
    つけつけとは哂(わら)わなんだで。」
    内共は、時々、呟(つぶや)くことがあった。
    内共は、昔をしのび、
    ふさぎこんでしまうのである。
     (芥川竜之介『鼻』)抄14

 「ボクの細道」好きな俳句(1010) 大木あまりさん。「五右衛門風呂の蓋はたつぷり赤のまま」(あまり) 「赤まんま」は秋季です。いまどき「五右衛門風呂」(釜風呂)などお目にかかることのない時代です。あまりさんの時代でもそのことに変わりはないはずです。しかし、赤まんまが実をびっしりとつける頃、農家の庭に、さび付いてはいますが、重々しく蓋をした釜風呂の残骸が残っていた・・そんな発想に飛ばせることは楽しい! 

      たちまちに北山時雨となりにけり

木魚歳時記 第3258話

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 「今日のことば」
    ところが、
    意外な事実を発見した。(内共の鼻を見た者が)
    前よりもいっそう可笑しそうな顔をして、
    内共の鼻を眺めることである。
    とうとうこらえかねて、
    吹き出してしまったことすらある。
     (芥川竜之介『鼻』)抄13

 「ボクの細道」好きな俳句(1009) 大木あまりさん。「春の波見て献立のきまりけり」(あまり) マンガ『となりん家(ち)の山田さん』(石井ひさいち)。もう、何べん読み返したことでしょう! マンガの主人公(お母さん)は、朝ごはんがすむとお昼ごはんのこと。お昼がすむと夕ごはんのこと。悩みは「おかず何にしょうか?」です。そして、いつも、トンチンカンの結末で終わります。

       鴉きてつひに食ひたり木守柿

木魚歳時記 第3257話

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 「今日のことば」
    鼻は、あの顎(あご)の
    下まで下がっていた鼻は、
    今はわずかに上唇の上で
    意気地なく残喘(ざんぜん)を
    保っている。
    内共は満足そうに眼を
    しばたたいた。
     (芥川竜之介『鼻』)抄12

 「ボクの細道」好きな俳句(1008) 大木あまりさん。「院長のうしろ姿や吊し柿」(あまり) 確かに、院長といえば長身ですらりと威厳のにじむ方が多い。それなのに、「吊し柿」とは、ひどい! この作者の作品は独特の美的風刺が感じられます。そのセンスのよさに拍手喝采したいのです。女流俳人にはめずらしいさっぱりした作風が好きです。

      するするとすっぽん雑炊食らひけり

木魚歳時記 第3256話

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 「今日のことば」
    「もう一度、これを茹(う)でればようござる。」
    弟子が云う。
    内共は、弟子の云うなりになっていた。
    「もう一度、これを茹(う)でればようござる。」
     (芥川竜之介『鼻』)抄11

 「ボクの細道」好きな俳句(1007) 大木あまりさん。「秋風や射的屋で撃つキューピッド」(あまり) キューピッドは、ヴィーナスの子で背中に小さな翼を生やし、手にした弓を放つことで、男女の「恋」を結ぶことで知られています。そのキューピッドを射的屋で撃ち落としたというのです。あまりさんはおめでたく失恋成就されたのでしょうか?

      吾妻の四つ違いやお茶の花

木魚歳時記 第3255話

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 「今日のことば」
    やがて、粟粒のようなものが、
    できはじめ、鼻は、
    毛をむしった小鳥を
    丸灸(やき)したような形である。
    「この毛をぬけということでござる。」
    と弟子は云う。
     (芥川竜之介『鼻』)抄10

 「ボクの細道」好きな俳句(1006) 大木あまりさん。「花こぶし汽笛はムンクの叫びかな」(あまり) 「ムンクの叫び」とは? あの名画のことを思い浮かべます。それに、白く咲きほこる、辛夷(こぶし)の花と、汽笛(きてき)と、この三つがそろえば、作者が何を何を示そうとしているのか? そんなことはもうどうでもよくなります。読者は好きなことを思い浮かべていればそれで充分です。

       水道の水そろそろと冷たくて

木魚歳時記 第3254話

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 「今日のことば」
    「痛うはござらぬかな」
    弟子の僧は、内共の禿げ頭を
    見下ろしながら、気の毒そうな顔をした。
    「痛うはないて」
    痛いよりもかえって気持ちのいいくらいだったのである。
     (芥川竜之介『鼻』)抄9

 「ボクの細道」好きな俳句(1005) 大木あまりさん。「女番長よき妻となり軒氷柱」(あまり) 「あまり」さん好き。長谷川 櫂さんと「あまり」さんの(昔の)ツーショトの写真(雑誌)はそれはそれは魅惑的でした。ボクのビョーキ(女流俳人好み)が嵩じます。それに「あまり」さんは女番長だった? こうなるとボクの妄想癖はとどまるところがありません。嗚呼。

      石仏の影青くなる秋の暮