木魚歳時記 第3182話

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「今日のことば」
   なめとこ山あたりの熊は小十郎をすきなのだ。
   その証拠に熊どもは小十郎がぽちゃぽちゃ谷をこえたり
   谷の岸の細い平らないっぱいにあざみなどの生えてゐる
   ところを通るときはだまって高いところから見送ってゐるのだ。
    (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)3

  「ボクの細道」好きな俳句(931) 永田耕衣さん。「薪在り灰在り鳥の渡るかな」(耕衣) 山国では、はやくも暖炉の火が恋しい(といより必要か?)。寒い期間に必要な薪(たきぎを)は、納屋横の壁面などに天井にとどくほど準備してあります。そして暖炉に火が入り、残り火の灰が赤々とする頃になると、冬鳥たちが北の国から渡って来ます。いよいよ「鳥渡る」冬の到来となるのです。

       草原をこの世と思ふばつたかな

 

木魚歳時記 第3181話

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 「今日のことば」
    だからもう熊はなめとこ山で赤い舌をぺろぺろ吐いて
    谷をわたったり熊の子供らがすまふをとっておしまひは
    ぽかぽか撲(なぐ)りあったりしていることはたしかだ。
    熊捕りの名人の淵沢小十郎がそれをかたっぱしから捕ったのだ。
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)2

 「ボクの細道」好きな俳句(930) 森 澄雄さん。「妻がゐて夜長を言へりさう思ふ」(澄雄) うまい。やはり違います。格調というか、年輪というか、ボクも、こんな作品を一つくらいは残してみたい。それには掲句のごとき(相棒との)実生活がそぐわなければ・・ブログ筆者のごとく、(夫婦)会話が少なめでは掲句のごとき作品が生まれるのは無理か!

       きちきちの跳ねて虚空の鎮もれり

木魚歳時記 第3180話

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 「今日のことば」
    なめとこ山の熊の胆(きも)は
    名高いものになってゐる。
    腹の痛いのにも利けば傷もなほる。
    鉛の湯の入り口に
    「なめとこ山の熊の胆(い)あり」といふ
    昔からの看板もかかってゐる。
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)1

 「ボクの細道」好きな俳句(929)  皆吉爽雨さん。「女湯もひとりの音の山の秋」(爽雨) いくどか、隠湯の温泉を尋ねたことがあります。早起きして山裾にある野天風呂に下ります。脱衣所に「女湯」とありますから、混浴ではないのは残念でした。しかし、女湯のあたりに、独り湯をつかう気配が感じられ、隠れ湯らしき格別の風情でした(汗)。

       熊の胆となめとこ山の笑ひ茸  

                   胆(い) 茸(たけ)

木魚歳時記 第3179話

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 「今日のことば」
    (兎は)
    また叫びました。
    「みんな
    狸にだまされるなよ。」
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)20 おわり

 「ボクの細道」好きな俳句(928) 塚原 彩さん。「天国はもう秋ですかお父さん」(彩) 天国はもう秋でしょう。さて、朝ドラ「ひよっこ」(NHK)が間もなく終了いたします。ボクは、ドラマの主人公がつぶやく「お父さん」のイントネーションにまいっています。それは、主人公の気持ちが、折々の「お父さん」のイントネーションこもるからです。ボクも、娘から、あのイントネーションで「お父さん」と呼んでほしい。

        深謀にだまされるなよ葛の花

木魚歳時記 第3178話

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 「今日のことば」
    (狸は)
    怒って云ひました。
    やかましい。
    はやく溶(と)けてしまへ。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)19

 「ボクの細道」好きな俳句(927) 神野紗希さん。「右左左右右秋の鳩」(紗希) 暑さがしのぎやすくなると、ますます、鳩の動きが「右左左右右」いたします。それから、いっそう、オス鳩は頭を低くしてメス鳩に迫ります。もうみさかいもなく、飽きることなくしつこく迫ります。人間社会にも似たようなことがあるようです(週刊誌)。              

        満月を鏡にうつし愛でにけり

木魚歳時記 第3177話

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 「今日のことば」
    (兎は)
    すっかり
    だまされた。
    (狸の)お腹の中は
    まっくろだ。
    あゝくやしい。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)18

 「ボクの細道」好きな俳句(926) フジモンさん。「マンモスの滅びた理由ソーダー水」(フジモン) 4チャンネル「プレバト」(俳句)のフジモンさん(芸能界)のことです。フルネームを記憶していないので失礼します。お題は「夏休みの宿題」でした。作品の主人公(小学生)は、宿題の材料を探しに博物館に行ったそうです。古生代に滅びたマンモスの骨格展示と説明を見て宿題を果たすことができた。少年は、ホッ、ソーダー水を飲む。その少年の気持ちを描いた作品(取り合わせ句)だそうです。お見事です。

        雲助のいつたりきたり秋の空

 

木魚歳時記 第3176話

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 「今日のことば」
    やがて
    兎はすっかり
    なくなってしまいました。
    そして
    狸のお腹の中で、
    云ひました。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)17

 「ボクの細道」好きな俳句(925) 塩貝朱千さん。「星とんで人魚の好きな赤ろうそく」(朱千) ここまで発想を飛ばせるなんてうらやましいかぎりです。塩貝朱千さんは、俳句結社「京鹿子」の副主宰です。いつかブログ筆者に頂いたお年賀に「フレーフレー真隆」と書き添えてありました。うれしくて頑張ろう! そんな気持ちになりました。ところが、ボクの俳句(太字)はご覧のように才能ナシ(汗)。

        赤い舌いまだちろちろ穴惑ひ