木魚歳時記 第3175話

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 「今日のことば」
    (兎は)これも仕方は
    ございませぬ。
    なまねこ、なまねこ。
    おぼしめしの
    とほりにいたします。
    むにゃむにゃ。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)16

 「ボクの細道」好きな俳句(924) 岡本 眸さん。「秋晴の踏切濡らし花屋過ぐ」(眸) 荷車に花を積んで売り歩く「花屋」の姿は見かけません。それと、チンコンと警報機の鳴る(平面交差)の踏切は少なくなりました。昔は、踏切は枕木が敷いてあり凸凹がありました。ですから花屋が通った後は、荷車からこぼれた水で濡れました。どこにでも見かけた懐かしい原風景です。      

        秋風をのせて回転木馬かな

 

木魚歳時記 第3174話

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 「今日のことば」
    (兎は)
    あゝありがたいな
    なまねこ。
    (狸は)
    もうなみだで身体(からだ)も
    ふやけそうに
    泣いたふりをしました。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)15

 「ボクの細道」好きな俳句(923) 藺草慶子さん。「学校へ来ない少年秋の蝉」(慶子) 作者が、この作品をつくられた時代のことはわかりません。しかし、現代、「学校へ来ない」児童・生徒の実態は深刻であるようです。そんな時、上野動物園が提唱した「学校へ行きたくない生徒へ向けた一言」が多くの反響を得たようです。つまり「(そんな時は)動物園にいらっしゃい」の呼びかけのことです。ボクは思い出します。金子みすゞさんの詩『小鳥と鈴』にある「みんなちがってみんないい」の歌詞のことです。

        かなぶんの深い穴掘るうんとこせ 

 

 

 

木魚歳時記 第3173話

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 「今日のことば」
    兎はますますよろこんで、
    あゝありがたや、山猫さま。
    おかげでわたくしは
    脚(あし)がなくなって
    もう歩かなくても
    よくなりました。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)14

 「ボクの細道」好きな俳句(922) 波多野爽波さん。「暗幕にぶら下がりゐるばつたかな」(爽波) おそらく、野外(校庭)に映写幕を用意して、地域の映画会が催されたのでしょう(昔はよくありました)。夕ぐれて映写が始まる少し前、まだ薄明るい暗幕の端にバッタがへばりついている。バッタも映画鑑賞するつもりなのでしょうか? この作者の軽妙な作品にはいつも感服をいたします。

       病葉の己が内なる寂光土 

                  病葉(わくらば)

木魚歳時記 第3172話

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 「今日のことば」
    (狸は)
    はいはい、かじります
    かじります なまねこなまねこ。
    と云ひながら
    兎のあとあしを
    むにゃむにゃ
    食べました。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)13

 「ボクの細道」好きな俳句(921) 中村汀女さん。「青桐や母屋は常にひつそりと」(汀女) 中村汀女さんとは驚きです! なぜなら、芭蕉さんはもとより、古い時代の有名俳人は、このブログにあまり登場されません。それは「ボクの細道」が、ボクの「好きな俳句」を選ぶからいたしかたありません。でも、掲句のように、静かな作品に出会うとホッとします。

        秋近し兄の遺影のセピア色

 

木魚歳時記 第3171話

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 「今日のことば」
    狸もそら涙を
    ポロポロこぼして
    なまねこ、なまねこ、
    こんどは兎の脚(あし)を
    かじれとは
    あんまりはねるためで
    ございましょうか。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)12

 「ボクの細道」好きな俳句(920) 宇多喜代子さん。「浮いているだけで大きな金魚かな」(喜代子) このところ気になることがあります。ボクのボケが強くなったのでしょうか? このブログの例句に揚げる俳句が重複することしきり? しかし、調べるのが面倒でそのままにしています。好きな俳句は何度出てもいい! 勝手な屁理屈をつけてそのままにしています(汗)。ご容赦ください。

        骨拾ふことなき兄よ浮いてこい

 

木魚歳時記 第3170話

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 「今日のことば」
     (兎は狸に)
    助かりますなら
    耳の二つやそこらは
    なんでもございませぬ。
    なまねこ。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)11

 「ボクの細道」好きな俳句(919)  正木ゆう子さん。「死を遠き祭りのごとく蝉しぐれ」(ゆう子) ゆう子さんの兄(浩一)さんは早世されたように記憶しています。ゆう子さんは、俳人である浩一さんの影響を受けて俳句を始められた? そんな記憶も残っています。それはともかく、身近の誰かの、今、身まかるというその時に枕もとで聴く蝉しぐれであるとすれば、それはやはり、特別のものがあろうと想像ができます。

       ひまわりの中のひまわりお姉さん

木魚歳時記 第3169話

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 「今日のことば」
    なまねこ、なまねこ、
    あゝありがたい、山猫さま。
    私のやうなつまらないものを
    耳のことまでご心配くださいますとは
    ありがたことでございます。
     (宮沢賢治「顔を洗はない狸」)10

 「ボクの細道」好きな俳句(918) 藤田湘子さん。「あめんぼと雨とあめんぼと雨と」(湘子) 俳句ではリフレインは多用されますが、成功した例が上掲の作品かと思います。「あめんぼ」も「雨粒」も、つぎからつぎから現れては消え、落ちてはまた落ちてきます。リフレインが「ことば遊び」に終わらないところがいいのです。そうです、俳句は、自然をそのまま観察して17文字となれば最高です。

       運動会ぼく走つたよお母さん