この律師は好んで獄舎をおとずれ、囚人の苦をあわれんで説法授戒した。また人に物を貸して返さぬものには念仏をさせたという。
律師はまた好学の人であったが生来の虚弱多病に悩みながらも、「病は人の善知識(ぜんちしき)である。われ病質の故を以て四大(しだい・宇宙及び人体を構成するという地水風火の四元素のこと)の堅からざる知りて、益々修行を勉めた」
(佐藤春夫『極楽から来た』)740
共食いは族の掟か冬蝗 掟(おきて) 蝗(いなご)
「ボクの細道]好きな俳句(1820) 稲畑汀子さん。「今日何も彼もなにもかも春らしく」(汀子) 作者はリフレインの名手です。また、作者は口語俳句の名手でもあります。池田澄子さんと双璧をなす口語俳句の名手だと思います。「むつかしいことを易しく。易しいことをより深く。より深いことを楽しく」(井上ひさし)の言葉を思い出します。
樹々(きぎ)の一家 6
私はもう、過ぎ行く雲を眺めることを知っている。
私はまた、ひとところにじっとしていることもできる。
そして、黙っていることも、まずまず心得ている。
『ルナール「博物誌」』(岸田国士訳) おわり