木魚歳時記

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木魚歳時記 第3409話

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 里では聞きなれない鳥が長くなきつづけるのに耳を傾けていると、あたりに見えなくなった甥の姿をたずねて来た観覚が、うしろから肩をたたき、
「どうだ、ここは、気に入ったか」
童子はあどけなくこくりとうなずいた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)112

     年の瀬に灯るあかりや蛸薬師

 「ボクの細道]好きな俳句(1159) 小枝恵美子さん。「なずな咲くてくてく歩くなずな咲く」(恵美子) なずな畑の中をどこまでも歩いていく作者の姿が思い浮かびます。上五と座五をリフレインさせる作品は少なくありませんが、この「なずな咲く」の自然で素直な繰り返しは楽しくて読者まで幸せにしてくれます。

木魚歳時記 第3408話

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 立ちつくす間に、脚下の山かげから暮れはじめ、しばらく愛情の念をもってあかずに眺めていた稲岡も弓削も刻々に深くなる夕もやに包まれてしまった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)111

      木食の裾でおろがむ寒雀  木食(もくじき)上人

 「ボクの細道]好きな俳句(1158) 小枝恵美子さん。「東風吹かばポテトチップス歩み来る」(恵美子) 「ポテトチップス歩み来る」とは? 男の子が、ポテトチップスを食べながらが近づく「私も食べたいなぁ」。そういえば、わたしのまわりの枯れ葉までみんなポテトチップスに思えてくる! 作者の奇想天外な発想に驚きます。

木魚歳時記 第3407話

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 菩提樹の林の下に立って見ると脚下に広い野原につづく津山の家々から稲岡や弓削のあたりまで遠く見晴らした。すりばちの底のような山峡で育った小矢児の目にはこの打ちひらけた景色がめずらしくうれしかった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)110

      野仏にひとつ石積む秋の暮

 「ボクの細道]好きな俳句(1157) 小枝恵美子さん。「推理小説りんごの芯に行き当たる」(恵美子) 推理小説カギは、おもいがけないところに、それも最後の最後まで隠されていることがあります。俳句を始めて5年くらい、すなわち、70歳のころまでは、多少とも面白い発想(「りんごの芯」)もひらめきましたが・・今は、干からびた泉のようにカラカラです(汗)。

木魚歳時記 第3406話

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 その東側には菩提樹といちょうの林とがあって、どちらも美しい新芽がもえていた。それらはすべて小矢児がかねて父母から聞き及んで想像していたものよりはずっと立派なものであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)109

      山寺は桶の中まで木の実落つ

 「ボクの細道]好きな俳句(1156) 星野麥丘人さん。「立冬の水族館の大なまず」(麥丘人) たしかに、水族館で大鯰の水槽を見つけたならば興奮すると思います。なにせナマズという代物(しろもの)はミステリアスに満ちていますから。ボクは大なまずに遭遇したならば半日は飽きずに眺めているでしょう。「すりこ木で鯰おさへし魯山人」(木魚)

 

木魚歳時記 第3405話

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 寺に、日本古代の山岳宗教の先達役(えん)の行者の開基を、天平年間に行基(ぎょうき)が再興したものといい伝えて、広びろと切りひらかれたところに殿堂、僧房、塔、鐘楼などがあった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)108

      今年酒ふり売り歩く酒の神

 「ボクの細道]好きな俳句(1155) 星野麥丘人さん。「冬服の紺まぎれなし彼も教師」(麥丘人) 時代が違うのですから仕方がないでしょう。昔は、地味な紺背広の教師は普通であったはずです。教師タイプの男性は、昔も、今もあるような気がします。いや、そうでもないか? 昨今の教師像についてはわからないところもありますから・・

木魚歳時記 第3404話

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 この山は小矢児も幼時、稲岡から見慣れていたし、得業(とくごう)の叔父さんがその山中の寺に住むことも聞きおぼえていたが、今日その寺に住む身になろうとは、小矢児には思いも及ばない運命であった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)108

     夕焼けて探しに来ないかくれんぼ

 「ボクの細道]好きな俳句(1154) 星野麥丘人さん。「無用のことせぬ妻をりて秋暑し」(麥丘人) 「無用のことせぬ」とは、必要なことだけしかしない。と、そうした奥様がおられても不思議はありません。ふむ。子育てから、掃除、洗濯、三度の食事。それだけでも大変です。(最近のテレビ報道など見て)男は、つくづくアホウだと思います。このボクも含めて・・

 

木魚歳時記 第3403話

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 菩提山は那岐山(なぎさん)の峰のつづきの南面支峰の山頂近く標高七百メートルばかりのところにあって、津山からは二十五キロあまりの地点にある。
那岐山というのは中国山脈中の一連峰で津山の北方に広い山すその平野をひろげてびょうぶのようにそびえ立つこと千四百四十メートルである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)107

      待合に代診とあり暮の秋

 「ボクの細道]好きな俳句(1153) 星野麥丘人さん。「来て洗ふ応へて墓のほてりかな」(麥丘人) 夏の墓参り(盆)は暑い。手桶の清水をかけるそれに応えるように涼しげに思えるから不思議です。しかし、実のところ「火照り」を収めるのはなかなか・・いくどもいくども冷たい清水をてっぺん(墓石)から掛けてあげます。