木魚歳時記

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木魚歳時記 第3136話

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 「今日のことば」
     (そのまたとなりの柏の木が)
    清作が、納屋にしまつた葡萄酒は
    順序たゞしく みんなはじけてなくなつた。
    わつはつはつは、ホツホウ、がやがやがや・・
    九とうしやう。マッチのメダル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)14

 「ボクの細道]好きな俳句(885) 大高 翔さん「妻といふ翼ひらけば青嵐」(翔) この「青嵐」(夏季)とは? (妻が居直れば)たいてい、一騒動が起こるものです。「それならわたしはどうなるのよ!」。と、そこまで行き着く前に、なんとか「はぐらかせる」ことに成功するのが、男性たる輩(やから)の「地力」というものでしょう。そうです、妻が、いったん、翼(つばさ)をひろげて飛立つてしまうと、古巣にもどるんことはなかなか・・

        縁側に吊るし見るだけ金魚玉

木魚歳時記 第3135話

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 「今日のことば」
     (そのとなりの柏の木が)
    清作は、葡萄(ぶだう)をみんなしぼりあげ、
    砂糖を入れて 瓶にたくさんつめこんだ。
    おい、だれかあとをつゞけてくれ。
    ホツホウ、ホツホウ、八とうぶりきのメダル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)13

 「ボクの細道]好きな俳句(884) 池田澄子さん。「青嵐神社があったので拝む」(澄子) 池田澄子さんの作品は「あっけらかん」として楽しい。神社は、日本中のどこにでもあります。それも、小さくてひっそりと人影のない神社が大半です。青嵐の吹き下ろす山裾に、そんな鄙(ひな)びた神社があったので拝んでから通りすぎた。ただそれだけの俳句です。俳句とはそんなもの(と思います)。

        蟇蛙つかみたちまち虫垂炎 

                  蟇蛙(ひきがえる)

 

木魚歳時記 第3134話

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 「今日のことば」
     (頑丈さうな柏の木が)
    清作は、一等卒の服を着て
    野原に行っつて、ぶだうをたくさんとつてきた。
    とこうだ。だれかあとをつゞけてくれ。
    ホウ、ホウ、七とうしゃう、なまりのメダル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)12

 「ボクの細道]好きな俳句(883) 立岩利夫さん。「麦の秋男ゆつくり滅びゆく」(利夫) 「男ゆつくり滅びゆく」とは? そのヒントは、季語の「麦の秋」にありそうです。「麦の秋」は、五月下旬ごろ、すなわち、初夏の季語です。麦が黄熟して刈り取られる頃の「光と影」に注目したいのです。万物が新緑に燃え盛る頃に、刈り取られ黄色く干された麦の束に「男の背中」つまり、男の哀愁を感じるというのです。麦が「二毛作」(勤勉)であるという含みもあるかも? 

       変ねェと妻いふぼくの夏帽子

木魚歳時記 第3133話

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 「今日のことば」
      (三ばん目の柏の木が)
    うこんしやつぽのカンカラカンのカアン
    あかいしやつぽのカンカラカンのカアン。
    うまいうまい、すてきだ、わあわあ。
    六とうしょう、にせがねメタル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)11

 「ボクの細道]好きな俳句(882) 橋本栄治さん。「皿に盛るパジルパジリコ夏来たる」(栄治) イタリア語で「バジリコ」、英語で「バジル」というようです。ハーブ系の青菜でイタリア料理などによく用いられ食材のことです。それはともかく、俳句は、心地よい「韻」(いん)が生命です。韻を踏むことで17文字に「心地よさ」が生まれるのです。掲句の「パジルパジリコ」のリフレインで朝のさわやかさが生まれました。

        山門のこんなところに蝉の殻

 

木魚歳時記 第3132話

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 「今日のことば」
      (となりの柏の木が)
    こざる、こざる、
    おまへのこしかけぬれてるぞ、
    霧、ぼつしやん、ぼつしやん、ぼつしやん、
    おまへのこしかけくされるぞ。
    うまいねえ、うまいねえ、とたんのメタル。

     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)10

 「ボクの細道]好きな俳句(881) 山口誓子さん。「泳ぎより歩行に移るその境」(誓子) 秋元不死男さん、飯島晴子さんのお二人の感性と比べると、誓子さんの作品には、磨き抜かれた珠玉の輝きのような魅力を感じます。まるで、俳句の教科書にしたいような正確さがあります。この「歩行にうつるその瞬間」にしても、その動きが鮮やかに映像として浮かび、動かしようがないから凄いのです。ボクは、誓子さんを俳句の神さまであると尊敬しています。

        遠雷や恋の生まれる黍畑 

                   黍畑(きびばたけ)

 

 

木魚歳時記 第3131話

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 「今日のことば」
     (少し大きな柏の木が)
    くるみはみどりのきんいろ、な、
    風にふかれて すいすいすい、
    くるみはみどりの天狗あふぎ、
    風にふかれて さんさんさん。
    うまいねえ、ニッケルメタル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)9

 「ボクの細道]好きな俳句(880) 秋元不死男さん。「吸殻を炎天の影の手が拾ふ」(不死男) まるで、小津安二郎監督の映画(ローアングル)を思い出すような見事なシーンが浮かびます。飯田龍太さんの作品に「手が見えて父が落葉の山歩く」(龍太)があります。両者の映像は違いますが、いずれも指先の動きが、まるでパントマイムを見るように鮮やかに浮かびます。         

        夜うごくへんないきもの山椒魚

木魚歳時記 第3130話

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 「今日のことば」
     (猫のうたです)
    やまねこ、にやあご ごろごろ
    さとねこ たつこ、ごろごり。
    わあ、うまいうまい。
    わつはゝ、わつはゝ。水銀メタル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)8

 「ボクの細道]好きな俳句(879)  飯島晴子さん。「泉の底に一本の匙夏了る」(晴子)「泉の底に一本の匙(さじ)」はフィクションでしょう。それはともかく、ことばの説明ではなく「ことば」そのものが映像化されて読者の脳裏に刻まれる。心象俳句作家の第一人者が飯島晴子さんです(と思います)。ですから飯島晴子さんにあこがれています。このブログで、飯島さんの作品を取り上げることが多いのもそうした理由によります。

       虎猫も蠅虎も飼ふてゐる

                蠅虎(はえとりぐも)