木魚歳時記

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木魚歳時記 第3522話

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 また街路樹にそよ風がわたるとその宝石の葉がざわざわ触れ合って種々な音色を合せかなでて、この合奏楽を聞く者は正しく生きる力の喜びを得られる。
(佐藤春夫『極楽から来た』)225

      尺蠖のねじれ漫歩やDNA  尺蠖(しゃくとり)

 「ボクの細道]好きな俳句(1273) 金子兜太さん。「死にし骨は海に捨つべし沢庵噛む」(兜太) 金子兜太さんは軍属として戦地(2次大戦)に赴かれたようです。この作品は、そうした戦争体験(作者自身)と読むことで重みが増すと考えています。戦争体験を詠まれた作品に佳作が多いようです。

木魚歳時記 第3521話

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 これらの鳥は前世の罪によって畜生に生まれ変わったのではない。もともとこの国には罪悪などというものは無いからその報いとてあろう道理もない。ただアミダブツがこの国の人々に正しい心を得させる手だてとして歌を愛する者を神通力(じんつうりき)によって鳥の形にしただけである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)224

      山姥の来て陶枕を出せといふ  陶枕(とうちん)

 「ボクの細道]好きな俳句(1272) 金子兜太さん。「三月十日も十一日も鳥帰る」(兜太) 一日遅れで渡り鳥は目的地に渡ることはありそうです。それぞれの群れの、それぞれの体に込まれた「帰巣本能」のようなものがそうさせるのでしょう。その違いにより、またそれぞれの異なる運命が待ちうけているのです。地球上の万物の「営み」は不思議にできているとしかいいようがありません。

木魚歳時記 第3520話

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 その声は人に生きる力や善美を愛する念を起させる。それ故、この国の人々は、その声を聞いて国土の愛すべく法の尊ぶべく、人々の和すべしを自然に悟るのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)223

      本尊は秘仏におはす蝮酒

 「ボクの細道]好きな俳句(1271) 金子兜太さん。「おおかみに螢が一つ付いていた」(兜太) 「おおかみ」も「蛍」も比喩として読むことも可能ですが、ボクは、そのまま「おおかみの背中に蛍が一匹ついて光っていた」と、自然詠として読みたいと考えます。兜太さんの、メルヘンチックな作品の一つとして鑑賞したいのです。

木魚歳時記 第3519話

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「この国には白鵠(びゃっこう)とかくじゃく、おうむ、舎利(しゃり)、カリョビンガ、共命鳥(ぐみょうちょう)などという奇妙に色の変わった鳥が多く住んでいて、それが日中三度、夜中三度、やさしくあもしろい声で歌う。
(佐藤春夫『極楽から来た』)222

      天山へ氷河鼠を食ひに行く

 「ボクの細道]好きな俳句(1270) 金子兜太さん。「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子」(兜太) 「秩父の子」とは、兜太さんご自身のことでしょうか(そう思います)。やんちゃ小僧と「曼珠沙華」の取り合わせがなんともいえない楽しい作品です。いかにも兜太さんらしい作品です。過日、兜太さんの訃報に接しましたが・・まことに俳界の巨星落つというかさびしいかぎりです。

木魚歳時記 第3518話

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 極楽はこんな文化国なのである。もっとも他心智などはここでは無用の長物として人々の笑い草にしかすぎなかった。というのはここではウソをいう必要もなく何ら他にかくさなければならない秘密もなかったからである。ただ他の国に行った時にだけその重宝なことがわかったという。
(佐藤春夫『極楽から来た』)221

      紅の蛇ぶらさげて乞食僧  乞食(こつじき)

 「ボクの細道]好きな俳句(1269) 金子兜太さん。「去勢の猫と去勢せぬ僧春の日に」(兜太) むむ。「去勢せぬ僧」とは! 実は、何を隠そう。ブログ作者は43歳の頃、泌尿器の癌(ステージ2)を宣告され大手術を受けました。両親と小学生と幼稚園の子どもたちを抱え、一瞬、前途のことで頭の中が「真っ白」となった記憶が残っています。すんでのところで「去勢の僧」ともならずにすんだのは仏さまのご加護のお蔭としかいいようがありません。

木魚歳時記 第3517話

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 この国ではまた天耳通(てんじつう)と呼ばれるラジオがあり、また天眼通(てんげんつう)と呼ばれたテレビもあり、別に他心智(たしんち)というウソ発見機以上のものも各自にそなえていた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)220

       定食にたどりつきたる金魚かな

 「ボクの細道]好きな俳句(1268) 金子兜太さん。「人体冷えて東北白い花盛り」(兜太) 兜太さんの代表句です(と思います)。りんごの花ですから、4,5月ごろに開花するのでしょうか、東北ではまだ雪が残り寒いことでしょう。「人体冷えて」とは? 大戦(二次)で戦死した戦友への回顧と追悼をも含めた作品と読みました。堂々とした兜太さん俳句らしい秀句だと思います。

木魚歳時記 第3516話

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 この人々が朝食ともいえない朝食前に、十万億の仏国の諸仏を供養してすみやかに帰ってくる大仕事をできるというのも、彼らは個々に飛行能力を持っていた。それは神足(じんそく)という最も精巧なヘリコプターにもまさるものであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)219

      仏壇の中が暑いぞなんとかせい

 「ボクの細道]好きな俳句(1267) 平井照敏さん。「死顔が満月になるまで歩く」(照敏) 「歩く」とはその人の人生を示すのでしょうか? 満月のように澄みきった顔をして死にたい! それは作者ならずとも誰しも思うことです。ですから、この作品は読者の願いにも通じる作品です。それに、作者、照敏さんの願いですが、少しもお説教くさくないのがいい。