木魚歳時記

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木魚歳時記 第3106話

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 「今日のことば」
    一郎は栗の木をみあげて、
    「栗の木、栗の木、やまねこが
    ここを通らなかつたかい。」
    とききました。
     (宮沢賢治「どんぐりと山猫」)4

 「ボクの細道]好きな俳句(854) 大木あまりさん。「わが死後は空蝉守になりたしよ」(あまり) 「空蝉」(うつせみ)とは、地虫(蝉)のぬけがらのことです。しかし、「空蝉守」は、抜け殻「守」のことではない? 王朝文学にからめてのこと? でも、ボクのような唐変木には、源氏物語などとてもとても。「空蝉守」などまるで禅問答のようでさっぱり(汗)。でも、あなたて面白いお方です。あまりさん。

        忖度はこの世のならひ蛇苺  

                    忖度(そんたく)

木魚歳時記 第3105話

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 「今日のことば」
    すきとほつた風がざあと吹くと、
    栗の木はぱらぱらと
    実をおとしました。
     (宮沢賢治「どんぐりと山猫」)3

 「ボクの細道]好きな俳句(853) 藤田湘子さん。「朝顔を蒔くべきところ猫通る」(湘子) 「人が種まきゃ鴉がほじくる」とは違います。掘り返してやわらかくしておいた土の上を、通り抜けたらしい猫の足跡が点々と残ります。これはしめた、朝顔の種を蒔(ま)のに好都合だ。というのです。湘子さんの俳句は、わかりやすくてホッとする作品が多いので好きです。

        色仕掛まんまとはまり蟻地獄

木魚歳時記 第3104話

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 「今日のことば」
    山猫のにやあとした顔や、
    そのめんだうだといふ
    裁判のけしきなどを考えて、
    おそくまでねむれませんでした。
    (宮沢賢治「どんぐりと山猫」)2

 「ボクの細道]好きな俳句(852) 飯島晴子さん。「泉辺の家消えさうな子を産んで」(晴子) 近くに泉が湧くくらいですから、山蘆(さんろ)のごとく鄙(ひな)びたお家なのでしょう。そこに、「消えさうな」母がいて、「消えさうな」子を産んで。しかも健気に育てている。もちろん「赤ちゃんポスト」のことなど想像もできない時代のことです。いつの時代であったとしても、母親とは、自身が仮に「籠の鳥」であったとしても、心強くも根気よく、勇気ある存在として在りつづけるのです。

        鵺鳴かせ証拠つかみし特捜部  

                       鵺(ぬえ)

 

木魚歳時記 第3103話

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 「今日のことば」
     かねた一郎さま 九月十九日
    あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこうです。
    あした、めんどなさいばんしますから、おいでん
    なさい。とびどぐもたないでくなさい。やま猫 拝
    (宮沢賢治「どんぐりと山猫」)1

 「ボクの細道]好きな俳句(851) 飴山 實さん。「貨車の扉の隙に飯喰う梅雨の顔」(實) 昔は貨物列車が流通の主流でした。長い貨車(50両くらい)の通過するのを数えた記憶があります。さて、そうした貨車の操車場での風景でありましょう。折から、梅雨の頃です、半ひらきの貨車の中で弁当を使う作業人(「飯喰う梅雨の顔」)の景が見えてきます。

       蟇一つ隣の池に通ひけり 

                  蟇(ひき)

 

木魚歳時記 第3102話

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 「今日のことば」
    (猟犬が飛び込み)
    「わん、わん、ぐわあ。」
    「にやあお、くわあ、ごろごろ。」
    家はけむりのやうに消えました。
    (宮沢賢治「注文の多い料理店」)11

 「ボクの細道]好きな俳句(851) 安住 敦さん。「でで虫や父の記憶はみな貧し」(敦)ふむ。そういえば、ぼくの父親、つまり、師僧は厳格な「父」でした。面と「お父さん」と呼んだ記憶は残っていません。なんと呼んでいたのかな? しかし、今、その父親と同年配(亡くなった)となり、「おやじ」と呼んでみたい気持ちをしみじみと感じています。ところで、ぼくも、ぼくの息子、娘たちに「お父さん」らしきことを十分にしてあげたか? 心の中でことりと句読点が音を立てます。

        梅雨しとど都に大路小路かな

 

木魚歳時記 第3101話

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 「今日のことば」
    (壁にナイフの形が・・)
    「いや、わざわざご苦労です。
    大へん結構にできました。
    さあさあおなかにおはいりください。」
    (宮沢賢治「注文の多い料理店」)10

 「ボクの細道]好きな俳句(850) 深見けん二さん。「夕闇の既に牡丹の中にあり」(けん二) 「坐れば牡丹」のことばがあります。それほど艶やかに咲く花であります。その艶やかな牡丹が、暮れなずむ夕闇の中に消えようとしています。これを「牡丹が夕闇に消える」のではなく、「牡丹の中に夕闇を感じた」というのです。ここにポエム(詩)が生まれるのでしょう。

       あのころは空白のまま武者人形

木魚歳時記 第3100話

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 「今日のことば」
    (扉の裏に)
    「いろいろと注文が多くて
         うるさかったでせう。お気の毒でした。
   もうこれだけです。どうかからだの中に、
   壺の中の塩をたくさん
   よくもみ込んでください。」
   (宮沢賢治「注文の多い料理店」)9

 「ボクの細道]好きな俳句(850) 日野草城さん。「やはらかきものはくちびる五月闇」(草城) 草城さんには、艶めいた作品が多くあります。この作品も「なまめいて」読むことも可能ですが、しかし、それは読み手の側に問題があることも多いでしょう。それはともかく、仏教用語の「上品」(じょうぼん)から「上品」(じょうひん)の用語が生まれ。「下品」(げぼん)から「下品」(げひん)の言葉が生まれました。

        百畳に百僧のゐて雨安居 

                   安居(あんご)