木魚歳時記 第1016話

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どのような不幸を 吸っても
はく息は 感謝でありますように
すべては恵みの呼吸ですから (河野 進)

 或る町に一人の貧しい貧しい老婆が住んでいた。或る日、町に修行者がやってくることを知り、灯明に使う油を寄進したいと思った。そこで、わずか二銭ばかりで、灯油を買い求めると、心に供養を念じながら修行者のところに捧げ持っていった。
 その夜、町に嵐がやってきた。ところで、お大尽(だいじん)が寄進した大量の油で灯した灯明は、嵐の中でみんな消えてしまった。しかし、老婆が捧げたわずかの油で灯した灯明だけはは、嵐の中でも明々と灯り、夜通し消えなかったという。

      痩蛙石に抱きつく目借りどき