木魚歳時記 第3203話

f:id:mokugyo-sin:20171001055903j:plain

 「今日のことば」
    栗の木と白い雪にかこまれた
    山の上の平らに
    黒い大きなものが
    たくさん環(わ)になって
    集まって
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)25

 「ボクの細道」好きな俳句(953) 石田郷子さん。「ざりがにの道に出てゐる野分あと」(郷子) 台風で「ざりがに」が流されたのでしょう。さて、驚きました。「木魚歳時記・多少のカバー汚れ・価格1000円。」のネット広告を発見しました。11年前に『木魚歳時記』を刊行して、お檀家さま、知人などに謹呈しました。(ですから、これは、ありうる出来事です)しかし、やはり複雑な思いもいたしました。しかし、これも「一期一会」(いちごいちえ)のお出逢いなのです。

       気まぐれの風に嬲られ葛の花 

                   嬲(なぶ)られ

 

木魚歳時記 第3202話

f:id:mokugyo-sin:20170930040552j:plain

 「今日のことば」
    すばるや参(しん)の星が
    緑や橙(だいだい)に
    ちらちらして
    呼吸をするやうに見えた
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)24

 「ボクの細道」好きな俳句(952) 石田郷子さん。「砂に手をおいてあたたか秋彼岸」(郷子) 「暑さ寒さも彼岸まで。」とはよく言ったものです。仏教でいう「彼岸」(ひがん)とは、此方の岸(煩悩)から彼の岸(悟り)に至ることを示します。ところで、仏教が日本に伝来して(江戸時代頃より)先祖崇拝、墓詣の風習と習合(しゅうごう)して、現在の春秋二回の「彼岸会」(ひがんえ)の仏教行事に定着したようです。

       金平糖ざらりとこぼし天の川

木魚歳時記 第3201話

f:id:mokugyo-sin:20170929184908j:plain

  「今日のことば」
    (それから三日目の晩)
    まるで氷の玉のやうな月が
    そらにかかってゐた。
    雪は青白く明るく
    水は燐光をあげた。
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)23

 「ボクの細道」好きな俳句(951) 石田郷子さん。「いちにちのをはり露けき火消し壷」(郷子) 昔は、「おくどさん」つまり、竈(かまど)でご飯を炊いていました。ボクのおふくろも、残り火のついたままの薪を、流しのところでジュジュー消してから、煙をあげる炭火の部分を「火消し壺」に入れていました。これは「消し炭」「からけし」となり、七輪(しちりん)の炭火として再利用されたのです。

       七輪をぱたぱたぱたと秋刀魚焼く

木魚歳時記 第3200話

f:id:mokugyo-sin:20170928052142j:plain

 「今日のことば」
    小十郎はがあんと 頭が鳴って
    まはりいちめんまつ青になった。
    それから遠くでかう云ふことばを
    聞いた。「おゝ小十郎おまへを
    殺すつもりはなかった。」
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)22

 「ボクの細道」好きな俳句(950)  石田郷子さん。「あたらしき鹿のあしあと花すみれ」(郷子) 鹿に踏まれることもなく菫(すみれ)の花が咲いていた。さて、坊主ハゼという小魚は、頭が丸く腹の鰭(エラ)や唇が吸盤状のため、急流も岩に吸いついて遡上することができます。仏教では、「一期一会」(いちごいちえ)と説きます。坊主ハゼも鯊(ハゼ)の妻とめぐり会い生涯を終えそうです。

       連れ添ひて一期一会や鯊の妻 

                     鯊(はぜ)

 

木魚歳時記 第3199話

f:id:mokugyo-sin:20170927055006j:plain

 「今日のことば」
    びしゅといふやうに
    鉄砲の音が小十郎に聞こえた
    ところが熊は少しも
    倒れないで嵐のやうに
    黒くゆらいでやって来た
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)21

 「ボクの細道」好きな俳句(949) 石田郷子さん。「ことごとくやさしくなりて枯れにけり」(郷子) 曼珠沙華でしょうか? 女郎花でしょうか? それは作者でなければわかりません。しかし、浮世の艶やかさをきれいさっぱり脱ぎ捨て、飄々としてお浄土へと旅立つ風情の女性(比喩)のことが思い浮かびます。このボクも「すこしは飄々としたかな?」と、(相棒に)問うと、「それはもう。老衰やから・・」とオウム返しされました。

        リビングの蛇口ひねれば水冷た

木魚歳時記 第3198話

f:id:mokugyo-sin:20170926060227j:plain

 「今日のことば」
    (うしろに)
    あの夏に眼をつけて置いた
    大きな熊が両足で立って
    こちらにかかって来たのだ。
    小十郎は落ちついて
    足をふんばって
    鉄砲を構へた。
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)20

 「ボクの細道」好きな俳句(948) 石田郷子さん。「まだそこにきのふがありし落椿」(郷子) 落椿の艶やかさはひときわです。ぼろんと落ちてなお風情を保っています。さて、「終活」(しゅうかつ)の言葉が目につきます。つまり、死んだときの準備をすることです。ボクも始めてみましたが・・「お父さん、ちゃんとしてあげるから。と、息子がいいました。」なるほど、棺桶に入ったら、自身がなりゆきを見届けるわけにはゆかない! なるようにしかならない。そこで「終活」するのは止めました。

        きちきちの跳ねて三千大世界

                  三千界=インド仏教の世界観 

 

木魚歳時記 第3197話

f:id:mokugyo-sin:20170925064004j:plain

 「今日のことば」
    小十郎が(山の)頂上でやすんでゐたときだ
    いきなり犬が火のついたように
    吠え出した。
    小十郎がびっくりして
    うしろを見たら
     (宮沢賢治「なめとこ山の熊」)19

 「ボクの細道」好きな俳句(947) 石田郷子さん。「団栗を拾ひしあとも跼みゐる」(郷子) ドングリを拾い終わって、作者は何か興味のあるものを発見したのでしょう。跼(くぐ)まった姿勢をくずさないというのです。さて、とりわけ最近に思います。女性と男性では興味を示すものに相当なひらきがある。これは両性の遺伝子の相違なのか? 両性の社会経験(学習)の違いによるものなのか? 

       秋蝶のたどり着きたるにはたづみ

                    潦 (にはたづみ)