木魚歳時記 第3059話

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 (道に)思いをこらし、耐え忍ぶこと強く、常に健(たけ)く奮励する。思慮ある人々は、安らぎに達する。これは無上の幸せである。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(815) 正木ゆう子さん。「冬眠の蛇身ときをり鱗立つ」(句集『夏至』) 蛇に鱗(うろこ)があることはわかります。しかし、その鱗が「鱗立つ」かどうか? それは想像の域でしょうか? 冬眠中のヘビがどのような行動をするのか、それはスコープ(内視鏡)で観察しなければわかりません。ボクは「鱗立つ」とは、人間の「鳥肌が立つ」ようなものだと思います。それはともかく、掲句は、「女性が蛇に対して抱くある特別な感覚」。それを鮮明に描いて成功した作品のように思います。

 「今日のことば」
         心配することが多いのは
         今をけんめいに生きていないからだ
         (石川 洋)

           平成の日本列島黄砂降る

 

木魚歳時記 第3058話

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 このことをはっきりと知って、つとめはげみを能(よ)く知る人は、つとめはげみを喜び、聖者たちの境地をたのしむ。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(814) 正木ゆう子さん。「めつむりて受くうりずんの夜風かな」(句集『夏至』) 「うりずん」は、沖縄地方の3月(旧暦)の、あたたかくて大地が潤う気候を示す言葉だそうです。さて、掲句は、作者としては比較的に抒情的な作品のように思います。ですから、読者も、沖縄地方の風景を思い浮かべながら、やさしい「うりずん」の夜風に吹かれることにいたしましょう。

 「今日のことば」
         美しさは女性の「武器」であり、
         装いは「知恵」であり、
         謙虚さは「エレガント」である。
         (ココ・シャネル)

          斑猫のここよここよと振り返る 

                     斑猫(はんみょう)

 

 

木魚歳時記 第3057話

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  第二章 はげみ
 つとめ励むのは不死の境地である。怠りなまけるのは死の境地である。つとめ励む人々は死ぬことがない。怠りなまける人は死者のごとくである。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(813) 正木ゆう子さん。「それは少し無理空蝉に入るのは」(句集『夏至』) ヤドカリでありません。それは無理でしょう。しかし、作者はそうした即物的なことを言いたいのではない? つまり「空蝉」(うつせみ)、蝉のヌケガラを見て、和歌の世界にあるような「女性の生きざま」に思いをはせられた? しかし、時間を巻き戻すことはできない。つまり、仏教の説く「諸行無常」(しょぎょうむじょう)の真理に思いをはせられた? 

 「今日のことば」
         流行とは
           時代遅れになるものよ。
         (ココ・シャネル) 

         かなぶんの去りて花唇の鎮もれり 

                      花唇(かしん)

 

木魚歳時記 第3056話

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 たとえためになることを少ししか語らないとしても、理法にしたがって実践し、欲情と怒りと迷妄とを捨てて、正しく気をつけていて、心が解脱して、執著(しゅうじゃく)することの無い人は、修行者の部類に入る。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(812) 正木ゆう子さん。「あさがほの蕊さし出づるところ白」(句集『夏至』)」 あの濃紺にひらく朝顔も、その蕊(しべ)となるところは真っ白である。ただそれだけのことです。しかし、なんでもないことをなんでもないように詠うことは、できそうでなかなかできません(汗)。さらに「やさしいことをよりふかく」(井上ひさし)ともなると凡人にはとても適いません。

 「今日のことば」
         やっぱりあいつは、
         風の又三郎だったな。
         二百十日で来たのだな。
         (宮沢賢治)

 
          かなぶんは隣の蕊にうつりけり

                        蕊(しべ)

 

木魚歳時記 第3055話

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 たとえためになることを数多く語るにしても、それを実行しないならば、その人は怠っているのである。牛飼いが他人の牛を数えているように、かれは修行者の部類には入らない。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(811) 正木ゆう子さん。「進化してさびしき体泳ぐなり」(句集『夏至』) 掲句の「進化」とは? 地球上の生態系の進化を指すのか? 作者自身の「進化」のことを指すのか? ボクは後者と読みました。例えば、句作活動においても、頂点を極めた次に訪れるもの。それは、進化なのか、停滞なのか、退化であるのか! それはともかく、確かなことは、仏教が説く「諸行無常」(しょぎょうむじょう)がこの世の真理であることに間違いはありません。

 「今日のことば」
         自分自身の道を
         歩め
         (ヘルマン・ヘッセ)

                      花蕊にしがみつきたるかなぶんぶん 

                       花蕊(はなしべ)

 

木魚歳時記 第3054話

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 善いことをなす者は、この世で歓喜し、来世でも歓喜し、ふたつのところで共に歓喜する。(わたくしは善いことをしました)といって歓喜し、幸あるところ(=天の世界)におもむいて、さらに喜ぶ。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(810) 正木ゆう子さん。「噴煙に日面のある大暑かな」(句集『夏至』) 作者の第4句集『夏至』は、第3句集『静かな水』の発刊より7年ぶり、平成14年(51歳)から平成20年(57歳)に発表された250句が収められています。句集のはじめに「半年後、わたしたちは太陽の向う側にいる」とあります。これは地球の自転を意識されてのことでしょう。作者の興味(テーマ)は『夏至』においても、依然、地球規模で持続されるのでしょうか?

 「今日のことば」
         誰もの心に、
         何かに向かって燃える火があります。
         それを見つけ、
         燃やし続けることが、
         私たちの人生の目的なのです。
          (メアリー・ルー・レットン)

         かなぶんへここよここよと花蕊かな 

                         花蕊(かずい)

木魚歳時記 第3053話

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 悪いことをなす者は、この世で悔いに悩み、来世でも悔いに悩み、ふたつのところで悔いに悩む。「わたくしは悪いことをしました」といって悔いに悩み、苦難のところ(=地獄など)におもむいて(罪のむくいを受けて)さらに悩む。(ダンマパダ)

 「ボクの細道]好きな俳句(809) 正木ゆう子さん。「春の月水の音して上りけり」(句集『静かな水』) 句集『静かな水』の巻末を飾る作品です。宇宙飛行船(第1号)のボストーク一船長のことばに「地球は青かった」があります。そうです、地球は「水の惑星」なのです。「水」により、地球上の生命が誕生し、その「いのち」が維持されているのです。地球上の「いのち」の共存を保持するために、地球上の環境を汚してはなりません。

 「今日のことば」
         太陽の光と雲ひとつない青空があって、
         それを眺めていられるかぎり、
         どうして悲しくなれるというの?
         (アンネ・フランク)

         だぼはぜといはれをとこの泣面  

                       泣面(なきっつら)