木魚歳時記 第2982話

f:id:mokugyo-sin:20170221050403j:plain

 (学生ジャトゥカンニンの質問)師(ブッダ)は答えた「ジャトゥカンニンよ、諸々の欲望に対する貪(むさぼ)りを制せよ。出離(しゅっり)を安穏(あんのん)であると見て。取り上げるべきものも、捨て去るべきものも、なにものも、そなたにとって存在してはならない。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(737) 井上菜摘子さん。「狐火をみごもりてより寡黙なる」(句集『さくらがい』)「狐火」(きつねび)は、夜間に、山野(墓地など)で見る発光現象のことです。燐火(りんか)を「狐が口より火を吐く」と見立てたのでしょう。さて、「狐火をみごもりて」とは? 女性が、理由(わけ)なく身籠ったと知ったならば寡黙(かもく)とならざるを得ない? ましてや「狐火」(きつねび)を身籠ったとなれば、寡黙ではすまされない。怪奇性のある季語を巧みに使いこなした秀作です。

 「今日のことば」 
         人生はロマン。
         自分は不幸だと悩むのではなく、
            試練を与えられた物語の主人公だと思えば、
         人生をエンジョイできる。
         (美輪明宏)

         妖精と鳥とモナドと風信子 

                    風信子=ヒヤシンス

 

木魚歳時記 第2981話

f:id:mokugyo-sin:20170220033834j:plain

 (学生ジャトゥカンニンの質問)ジャトゥカンニンがたずねた「師(ブッダ)は諸々の欲望を制してふるまわれます。例えば、光輝ある太陽が光輝によって大地に打ち克ったように。智慧ある方(ブッダ)よ、智慧の少ないわたくしに、この世において生と老衰とを捨て去る理法を説いてください。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(736) 井上菜摘子さん(冬季)。「雪吊のどこに触れても海鳴りす」(句集『さくらがい』) 「雪吊」(ゆきつり)は、積雪による庭木の被害を防ぐために庭木の枝に施す養生(ようじょう)のことです。さて、日々の暮しにおいて(夫・家族に守られ)いつも穏やかそうに見えるこのわたくしも、ひとたび、その家庭に危機が訪れるなら「北海の荒波が海鳴りするようにわたくしも全身全霊で危機に立ち向かいますわよ」と、そんな作者の声が聞こえてきそうです。

 「今日のことば」 
         悲しみが来るときは、
         単騎ではやってこない。
         かならず軍団で押し寄せる。
         (シェイクスピア) 

         薄氷を寄せてつづくる掛接屋 

                     掛接屋(かけつぎや)

木魚歳時記 第2980話

f:id:mokugyo-sin:20170219061616j:plain

 (学生ジャトゥカンニンの質問)ジャトゥカンニンがたずねた「わたくしは、欲望を求めないで、激流を乗り超えた人(ブッダ)におたずねしようと、ここに来ました。安らぎの境地を説いてください。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(735) 山口誓子さん。「冬日没る金色の女体かき抱かれ」(誓子) 「金色の女体」とは? 夕日(冬日)に映える雲の形が、金色にかがやく女体のように、いや、それよりも美しくかがやいて見えた。あるいは、今、まさに冬日(夕日)のさし込む部屋で抱かれる女体の美しさを描こうとしたした? いずれにしても女体賛美の一句でありましょう。

 「今日のことば」 
         ひとりじゃないんだよ
         ひとりじゃないんだよ
         生きる そのことが
            にょらいの生  
        (木村夢相)

         雪とけの道ほんのりと湯気の中

木魚歳時記 第2979話

f:id:mokugyo-sin:20170218044359j:plain

 (学生カッパの質問)師ブッダは答えた「カッパよ、このことをよく知って、よく気をつけ、現世において全く煩(わずら)いを離れた人々は、悪魔に伏せられない。かれらは悪魔の従者とはならない。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(734) 鳴戸奈菜さん。「冬うらら隣の墓が寄りかかる」(奈菜) 崩れそうな無縁墓によりかかられた。それでも小春日の陽気です、なんとかそのままよりかかられてゆきましょうか。それはともかく、車内で(鈴木杏珠さんのような)妙齢の女性に寄りかかられる至福(座席)はたまりません。男は、なんで「あとが面倒」を十分に承知しながら、そのような至福を喜ぶのでしょうか(汗)? 

 「今日のことば」 
         自らも楽しみ人々にも喜びを与える。
         大切な人生をこうした心構えで送りたい。
         (松下幸之助)

         海鳴りのころんごろんと結氷期

 

木魚歳時記 第2978話

f:id:mokugyo-sin:20170217065045j:plain

 (学生カッパの質問)師ブッダは答えた「カッパよ、いかなる所有もなく、執著(しゅうじゃく)することがないこと、これが洲(避難所)に他ならない。それをニルヴァーナ(涅槃・ねはん)と呼ぶ。それは老衰と死との消滅である。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(733) 上田五千石さん。「しやがむとき女やさしき冬菫」(五千石) ほんとうです。女性が菫や土筆(つくし)など小さな草花を愛でる姿は優しさに満ちています。上記、『スッタニパータ』にいう「ニルヴァーナ」(涅槃・ねはん)の境地に似ています。

 「今日のことば」 

         明日死ぬかのように生きよ。

         永遠に生きるかのように学べ。

        (ガンジー)

          小春日和やひどく眠たい石地蔵

 

木魚歳時記 第2977話

f:id:mokugyo-sin:20170216053300j:plain

 (学生カッパの質問)師ブッダは答えた「カッパよ、極めて恐ろしい激流が到来したとき水の中にある人々(老衰と死とに圧倒されている人々)のために、洲(す)(避難所)を、そなたに説くであろう。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(732) 山田太郎さん。「墓さへも減りゆく村の蕎麦の花」(太郎) 「墓じまい」のことが話題となっています。いろんな事情で、ご先祖のお墓を維持できないことはわかります。一方で「俺は、親から、家と仏壇と先祖の墓は守れといわれてきた」。と、きっぱり言い切る若者もいます。それはともかく、掲句は、過疎化の村を詠って抒情のある作品です。

 「今日のことば」 
         一人ひとりに天の使命があり、
         その天命を楽しんで生きることが、
         処世上の第一要件である。
         (渋沢栄一)

          野仏と雪と氷ときらゝ水

 

木魚歳時記 第2976話

f:id:mokugyo-sin:20170215053301j:plain

 (学生カッパの質問)カッパがたずねた「極めて恐ろしい激流が到来したときに一面の水のうちにあるある人々、老衰と死とに圧倒されている人々の避難する洲(す)、依り処について説いてください。」(スッタニパータ)

 「ボクの細道]好きな俳句(731) 中村草田男さん。「冬の水一枝の影も欺かず」(草田男) 超有名句です。冬の川が、澄みきって、流れゆくさまを活写して見事な作品です。すべてに達観した作者の風格が感じ取れる作品です。「むつかしいことをやさしく、やさしいことをより深く」(井上ひさし)。そのことばを俳句に仕立てた見事な作品という以外にありません。

 「今日のことば」 
         夢中で日を過ごしておれば、
         いつかはわかる時が来る。
          (坂本龍馬)

         小春日のすゞめあつまる文殊堂 

                    文殊堂(もんじゅどう)