木魚歳時記 第3150話

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 「今日のことば」
     (狐の子も面白さうに)
    四郎はしんこ、かん子はかんこ、
    黍(きび)の団子を
    おれやろか。
     (宮沢賢治「雪渡り」)8

 「ボクの細道」好きな俳句(899) 八田木枯さん。「麦藁帽妙にふかくて寂しいぞ」(木枯) 農村とかならばともかく、麦藁帽子をかぶる人を見かけることは少なくなりました。それはともかく、麦藁帽子を妙に深々と被った人と出会った? なにかよからぬことでもあったのでしょうか? あっ、もしかしたら読み違い? 自身の麦藁帽子がずぶりと入りすぎ、一瞬、痩せたのかな? 年老いたのかな? と妙に寂しい気持ちになる自分が居る。ボクは後者だと思います。

       風狂やこの世さかさに蚊のつるむ  

                      風狂(ふうきょう)

 

木魚歳時記 第3149話

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 「今日のことば」
     (四郎は笑って)
    狐こんこん、狐の子、
    お嫁がいらなきゃ
    餅やろか。
     (宮沢賢治「雪渡り」)7

 「ボクの細道」好きな俳句(898) 高野素十さん。「夏木立一とかたまりに桶狭間」(素十) 信長と今川義元が戦った桶狭間(おけはざま)は、当時、戦略的な要衝(ようしょう)であったことでしょう。その桶狭間も、現在は、平地とゆるやかな丘陵が広がる名古屋市緑区となりました。だからといって、掲句がおかしいわけではありません。今は昔、夏木立がひつそりと、古戦場の「できごと」を物語っているというわけです。

        マドンナをつかみそこねて鋏虫

 

木魚歳時記 第3148話

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   「今日のことば」
     (そこで子狐は)
    四郎はしんこ、
    かん子はかんこ、
    おらはお嫁はいらないよ。
     (宮沢賢治「雪渡り」)6
 「ボクの細道」好きな俳句(897) 大木あまりさん。「わが死後は空蝉守になりたしよ」(あまり) 蝉の「ぬけがら」は、いつまでも枯れ枝に、しがみつくようにして残っています。さて、わが死後はとは? 「空蝉守」(うつせみもり)とは? ボクのうすら頭ではよくわかりません。推察するにあまりさんは異常に蝉の「めけがら」がお好きなのでは? ですから、死んだ後も、そのまま「空蝉守」(うつせみもり)としてこの世に残られる(汗)。 

      女郎蜘蛛ここよわたしは美しい

 

木魚歳時記 第3147話

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 「今日のことば」
     (四郎はそこで)
    狐こんこん白狐、
    お嫁ほしけりゃ、
    とってやろよ。
     (宮沢賢治「雪渡り」)5

 「ボクの細道」好きな俳句(896) 安住 敦さん。「でで虫や父の記憶はみな貧し」(敦) そのとおりです。厳しい、怖い、ビリビリする。それ以外に、父について何か思い出そうとしてもありません。母親はこの逆です。これは、ボクにかぎること? かも知れません。しかし、父の亡くなった年齢となりつくずく思います。苦しい状況の中で大学まで行かせてくれた。などなど、父親に感謝しています。ありがとう「お父さん」。

       うしろより液化はじまるなめくぢり

木魚歳時記 第3146話

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 「今日のことば」
     (すると)
    凍(し)み雪しんしん、堅雪かん。
    と云ひながら、キシリキシリ雪をふんで
    白い狐の子が出て来ました。
     (宮沢賢治「雪渡り」)4

 「ボクの細道」好きな俳句(895)  鈴木六林男さん。「わが死後の乗換駅の潦」(六林男) 「潦」(にわたずみ)とは、(夕立などで)地上にできた水たまりのことです。夏の季語となるのでしょうか? (通勤の時に見かけた)乗り替え駅の、いつもの場所のいつもの「水たまり」は、定年後も、いや、自分の死後もおなじようにあるのだろうか? まことに「しんみり」とする作品です。

       片かげり犬が寝てゐるどうしやう                    

 

木魚歳時記 第3145話

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 「今日のことば」
    堅雪かんこ、凍(し)み雪しんこ。
    狐の子ぁ、嫁ぃほしい、ほしい。と
    二人は森へ向いて高く叫びました。
     (宮沢賢治「雪渡り」)3

 「ボクの細道」好きな俳句(894)  上田五千石さん。「ふだん着の俳句大好き茄子の花」(五千石) テレビ4チャンネルの、人気番組「プレバト」は楽しい。この番組のお陰で、俳句がずいぶんと身近になったでしょう。番組構成(プロデュース)の巧みさもありますが、しかしなんといっても、夏井いつきさんの絶妙の指導にあります。それがわかりながら、いざ、実作となると、ボクはまったくお手上げです。凡人の凡人たる所以です。

      若者のここにあつまるビヤガーデン

木魚歳時記 第3144話

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 「今日のことば」
    堅雪かんこ、凍(し)み雪しんこ。
    二人は森の近くまで来ました。大きな柏の木は
    枝も埋(うず)まるくらゐ立派な透きとほつた
    氷柱(つらら)を下げて重そうに身体を
    曲げて居りました。
     (宮沢賢治「雪渡り」)2

 「ボクの細道」好きな俳句(893) 鈴木六林男さん。「泥棒や強盗に日の永くなり」(六林男) 日永(ひなが)、つまり昼間の長い夏は、空き巣、コソ泥にとっては稼ぎ時なのです。稼働時間が多くなるからです(笑)。ウソのような本当の話なのかもしれません。ところで、盗難の手口も様変わりしてきました。重機を使って「現金出納機」丸ごとかっぱらう! 大胆不敵というか奇想天外というか、世の中変わってきました。

         青鷺の独去独来独居癖 

                     独去(どっこ)