「そんなものぐさもゆるし、そんな戯(たわむ)れにも真意をよくくみ取ってもらえるだけのごく親しい友だちで、名門の出ではないようですが、それにもまさる高い人がらで、親切でほんとうに出家らしい出家ですからこの人ならば、末々まで、何かとよくはからってもらえましょう」
「ほんとうに何から何まで行きとどいた心づかいで」と、姉は弟に感謝した。
(佐藤春夫『極楽から来た』)289
変ねえと妻いふぼくの夏帽子
「ボクの細道]好きな俳句(1336) 山口誓子さん。「探梅や遠き昔の汽車にのり」(誓子) めずらしく抒情俳句です。作者の思いが、なんとなく読者の心に届きます。「遠き昔の汽車にのり」の抽象的な表現は、もしかして、作者の遠い昔の回想では? 誰でも、ひそかに、心の底を探れば「遠き昔」のうずきにも似た感傷に触れるのでは!