木魚歳時記

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木魚歳時記 第3301話

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 定国は御座に近く伺候(しこう)しようとあせりながらも波の上をわたる工夫をしているうちにお姿は消えてしまった。
 しかし定国、定国とお召しのお声ばかりはいつまでも聞こえている。しかもそれは主上の在(おわ)した日のお声をさながらなのである。定国はもったいなさに床の上に起き上って坐(すわ)り直し、お姿の消えたあたりをじっと見入りつつ、お側には一人のさぶらいつく者もなかったのを思い出していた。これも、もしかすると半分夢見心地であったのかも知れない。
 先夜の夢を思い出した定国は、さてはわが君も、五十六億七千万年後に兜率天(とそつてん)からこの世に下降して衆生を済度すると聞く弥勒菩薩(みろくぼさつ)を龍王となってお待ち遊ばしておられるのだと合点(がてん)した。
(佐藤春夫『極楽から来た』)7

      しんがりはのつぽ猫背の鉢叩

 「ボクの細道]好きな俳句(1052) 安住 敦さん。「啓蟄の庭とも畠ともつかず」(敦) 現役を引退された? 蟄居(ちっきょ)とありますから。質素な住宅の周囲は、庭園とは名ばかり植木が並ぶでもない。さりとて畑ほどひろびろとしているわけでもない。近郷にあるごくありふれた住居の様子が浮かんできます。