木魚歳時記 第270話

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はぐれ鴨 この世逆さに 夕餉かな

 鴨はふつう午前中に川底の餌をあさります。水面にぴょっこり尻を残す風情は冬の風物詩です。

   「いだかれてあるとも知らずおろかにも
    われ反抗す大いなる手に」(九条 武子)

 どなたかの「この世逆さに」の中七を借用させていただきました。なぜ?ふつうの鴨たちがねぐらに帰るころ、独り「この世逆さに」に藻屑刈するはぐれ鴨は、ぼくの人生とオーバーラップするからです。「この世逆さに」以外に表現はないのです。