木魚歳時記第4833話 

 聖覚から聞けば、師の高足聖光は『摩訶止観』を捨て、『往生要集』をさし開いて、わが釈尊は吉水の師のみと、決然、専修念仏に帰し、源平の戦乱をも知らなかった山第一の学匠、澄真の随一の弟子で、そのあとつぎと目される身でありながら、道のためには先師を捨てて憚らないと聞きおよぶのに比して、わが身はさほどに心を悩ますか、何んと不甲斐のない事、と親鸞は身の意気地なさを恥じ、己をはげしく鞭打った。(佐藤春夫『極楽から来た』)

         髭づらにムスクの匂ひ熱帯夜

 「熱帯夜」は夏季となります。「ムスクの匂」とは? 例えば「麝香(じゃこう)鹿の匂ひ」とか用いる? しかし、ぼく自身が、その「ムスクの匂ひ」を嗅いだことがありません! それでも平気で俳句にします! 恐れ多いことです(笑)。