木魚歳時記第4788話

 法然はできるだけ俚耳(りじ)に入りやすく説いて、その教えは「一枚起請文」みるように単純至極、ただお念仏を申しさえすればよいのである。そうして理論も何もなく、法然説くところも直観的であったから、その真意は知り難く、私意を加えれば誤解を生じやすいものであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1422

       つゆじめり壁に青めく解剖図

 なんのことはない、学校の理科の実験室を思い出してください。折から・・実験室に張られた解剖図(かいぼうず)に、外のミドリが色濃く差し込んでいます。だれもいない、がらんとした実験室の壁に貼られた、解剖図の唇がふと動いたように見えた・・ただそれだけのことです。