木魚歳時記第4770話

 山上こそ女人禁制が厳に制せられたが、叡山僧でも、山下では里房に公然妻帯生活をする澄憲のごとき子持ちの名僧大徳も多いが、だれも非難する人もないこの時勢に、念仏の草庵で新しく女人を忌避したり、戒律を誇ったりするのを法然は好しとせず、むしろ自家撞着(じかどうちゃく)と考え、そんなわき道へそれようとする念仏を警戒した。 法然には、澄憲の子聖覚が、近来草庵から足遠くなった理由もわかり、もっと世間並みで自由な吉水の僧団を望んでいたのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)1404

      14 魂の山に鎮もり山眠る

 シッタルタ王子(後の釈迦)は苦行・修行の結果では悟りに達することが出来ず、生死の境をさまよっておられました。その時、村娘スジャータの捧げるヨーグルトを召されて、煩悩から脱せられた、と、伝えられています。今、高野山は「沙門空海」を慕い訪れる人たちを待ち受け日々佇んでいます。