木魚歳時記 第3312話

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 「きのう云うのを忘れていたが、手紙のほかに金子(きんす)もいくらか預かっている。必要ができたらいつでもいいなさい。そのほか何の相談にも乗ろう。預所のことでもわしで間に合うことなら、いくらでも手つだいからね」 とまずやさしく慰めた。そうして暗然とあたりを見まわしながら甥の請じたままに、定明がそこに所在なげに寝そべっていた火の気もない炉ばたに来て坐った。定明も起き起き直って、数日前の朝、父が見たと語った不思議な夢のことをくわしく告げると、叔父は一語一語うなずいて聞いた末に、(佐藤春夫『極楽から来た』)18

      雪豹の鋭角に切る夏氷河

「ボクの細道]好きな俳句(1063) 能村登四郎さん。「はたらいてもう昼が来て薄暑かな」(登四郎) ボクも、若い時はこのようにがむしゃらに働きました。それはもう「薄暑」(はくしょ)どころではなく「油照り」「ただ灼けて」の状況でした。ところが、最近では「明易し昼がまた来る高齢者」の句を詠むほどに衰えました(汗)。