嘉応(かおう)元年法然三十七歳の一日、師匠叡空が彼に意外な事をいい出した。
「源空そなた迷惑でもあろうが、ちょっと院まで参じてはくれまいか。実はわしが招かれたが、知ってのとりわしは貴人の前は大きらいさ。礼法(れいほう)を心得ないからの。そこでわしはいささかの恙(つつが)ありさ、本当だ。これこのとおり」と一つ二つ咳(しわぶき)をして、
(佐藤春夫『極楽から来た』)757
さつきからどこもうごかぬ冬の蠅
「ボクの細道]好きな俳句(1836) 稲畑汀子さん。「見ることも松の手入でありしかな」(汀子) ふむ。わかります。松の手入れは、何年もかけてその職人さんの思いのままに育てられます。職人さんの個性がにじむものです。とりわけ、気合の入った職人さんの「作品」(松手入れ)を見るのは楽しみの一つです。
上をど(浄土)から、なむあみだぶのふねがきて、
まう(つ)てをるぞよ。
これがわたしのふねでござるか。
ごんうれしや、なむあみだぶつ。
『定本 妙好人 才一の歌』(楠恭編)