木魚歳時記第4016話

f:id:mokugyo-sin:20191031054323j:plain

 女院の面影は、この世に比べるべき何物か弥もないほどで、強いてこれを求めるとわずかに弥生の空の下ににおうばかり吹きこぼれた桜だけがいくらか女院に似ているように思われるばかり、聡明、謹厳、自尊、寛容、それに衣類も、当時流行の紺などは見ぐるしいものは召さないだけの高雅な趣味があって、謹厳犯しがたい品格のうちにもこぼれるばかりのあいきょうがあって、時には驚くばか 侍女たちにもうちとけた態度を見せ、白い額にこぼれかかる黒髪なども艶に、ある夏の日、
(佐藤春夫『極楽から来た』)688

    あれがこれこれがあれ食ふ蝗かな  蝗(いなご)

 「ボクの細道]好きな俳句(1763) 秋元不死男さん。「すみれ踏みしなやかに行く牛の足」(不死男) 牛は、でかい図体のわりに細い足首をしています。そのしなやかな足首でスミレの花を傷つけないように(そう思えた)草むらを進む状況が浮かび好感のもてる作品です。

 かわ沙魚(はぜ)4 私は網をあげて、かわ沙魚を放してやる。
その下流の方で、急にぐいぐい私の釣り糸を引っ張るやつがあり、二色に塗った浮子(うき)水を切って走る。
引き上げてみると、またしても彼である。