木魚歳時記 第3918話 

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 ともあれ、一族がすべて悲惨な最期を遂げたのちまで、頼政はすでに五十の半ばも越えた身で、ただひとり、うまく生き残っていた。
 しかしうまく生き残ったというだけで、保元にも平治にもその手柄はあまり認められなかったものか、花々しい恩賞にはにも預からなかった。一族を屠(ほふ)った巧はすべて平清盛がすっかりさらって行ってしまった。
 ただ保元三年、十二月二十日、二条天皇即位の日に禁中に乱入した狂人を取り押さえた巧によって、後白河院の院への昇殿をゆるされた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)599

         どこまでもゆめうつつなり花野原  

 「ボクの細道]好きな俳句(1667) 後藤比奈夫さん。「寒いからみんなが凛々しかりにけり」(比奈夫) 凛々(りんりん)は、寒さの身にしむ感じです。「しかりけり」とは、そのようであります・・そんな意味です。つまり、寒いのでみんな身を潜めてじっとしている。そういうことです。さて、「夢野原」のお話。夢ならば覚めてほしくはない・・つまり、一面の花野原を彷徨するような「うつつゆめもどき」の夢ならば、このまま覚めて欲しくはない! そんなたわいもないお話です。

鼠(ねずみ)2 鼠が一匹、眼を覚ましているのである。
女中が布巾(ふきん)やブラシを入れて置く暗い穴の縁を、行ったり来たりしているのがわかる。