木魚歳時記 第3850話

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 清盛の熊野詣ではまことにタイムリーなわなであった。
信頼や義朝は憎い信西を思う存分にかたずけて、クデターの一応の成功にいい気になり、十二月九日から十七日まで天下を取った気で、当然次に起こるはずの事態に備えるだけの用意もないうつけかたであった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)534

        蟹の子とまた会いたくて夕立来る

 「ボクの細道]好きな俳句(1600) 三橋敏雄さん。「外を見る男女となりぬ造り滝」(敏雄) 「造り滝」とは? 湯舟に流れ落ちる温泉の湯? そのくらいに連想しておきましょうか。そうすると、箱庭の中に居るような、味気ない男女の関係を妄想してしまいます。考えすぎでした。さて、キャッシュレス決済の動きがさかんです。しかし、財布の中で「よれよれ」渡り歩いて来た古紙幣に愛着を感じるのはボクだけてしょうか?

 牛(うし)3  角を繋(つな)がれたまま、頭はじっと動かさずに、彼は腹に皺(しわ)を寄せ、尻尾(しっぽ)でもの憂(う)げに黒蠅(くろばえ)を追いながら、女中が箒(ほうき)を手に持ったまま居眠りをしているように、ポリュックスが来るまで一人でもぐもぐ口を動かしている。