木魚歳時記 第3845話

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 いっそ一度筑紫へ落ちのびて兵を募ってから改めて攻め上ろうという者もあり、いや、それではその間に義朝も東国から兵を集めるであろう。などと、一行がとつおいつしているところへ、地方の豪族、湯浅宗重が三十七騎を従えて馳せ参じ、早く都へといっているところへ、熊野の別当湛増もよろい七領に弓矢をそろえて送りとどけて来た。
(佐藤春夫『極楽から来た』)529

        雛僧の蚯蚓鳴くごと夕読経  蚯蚓(みみず) 

 「ボクの細道]好きな俳句(1595) 三橋敏雄さん。「熊の子も一つ年とり穴を出づ」(敏雄) ということは、熊の子は冬眠の間にお誕生日を迎えたのでしょう。ところで、熊は、冬眠の間、餌を取れないので、体内脂肪を蓄積するために、冬眠の前に「食いだめ」をします。この一連の行動があるから俳句が生まれるのです。さて、キノコ → 鳥の餌 → 鳥の糞 → 土 → キノコ。この命の循環に「すべてのモノに神仏が宿る」と信じた先人たちの直感は偉大です。

 牝牛(めうし)7  独り暮らしにも拘(かかわ)わらず、盛んな食欲のお蔭で、退屈するどころではない。最近に産み落とした犢(こうし)のことをへぼんやり想い出して、わが子恋しさに諦(な)くということさえ稀(まれ)である。ただ、彼女は人の訪問を喜ぶ。額の上ににゅうと角を持ち上げ、唇(くちびる)には一筋の涎(よだれ)と一本の草を垂らして舌なめずりをしながら、愛想よく迎えるのである。