木魚歳時記 第3604話

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 そうしてその手もとにはわずかに二年足らず置いただけで、
「愚鈍の我の如キ、コノ麒麟児が教導ノ任ニアル資格ナキヲ自ラ憫(あわれ)ミ且ツ憾(うら)ム。庶幾ス幸ニ台下ノ門ニ在リテ懇(ねんご)ロノ垂教ヲ賜エ云々」
という文とともにこの少年を東塔西谷功徳院に住した肥後阿闍梨皇円(あじゃりこうえん)に送った。
 愚鈍浅才と源光がいうのはもとより彼の謙遜で、実のところはその家門の低さを顧みてこの少年の将来のために門閥のある学僧皇円に託したものと思われる。
(佐藤春夫『極楽から来た』)306

      雪かしら空気の重いこんな夜は

 「ボクの細道]好きな俳句(1354) 高浜 虚子さん。「遠山に日の当たりたる枯野かな」(虚子) 目前に「枯野」があって、その後方遠くに目を移すと、明々と日の当たる山並みがあざやかに読者の目に浮かんできます。このように、作者の作意と読者の読みがぴったり容易に合致するのも名作と成る条件の一つでありましょうか。それがなかなかできません(汗)。