木魚歳時記 第3566話

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 さて今日は、観覚が三度目に出向いて来て、道中の相談であった。可愛い子にどうして旅をさせようか、海路か、陸路か、どちらもあんまり安心できない。
 海路は日和さえ見定めれば楽であろうが、純友(すみとも)の事以来横行しつづけている海賊のことが陸路より危ない。
(佐藤春夫『極楽から来た』)269

      母ひとり子がひとりゐる小鳥の巣

 「ボクの細道]好きな俳句(1316) 木下夕爾さん。「秋の日の瀬多の橋ゆく日傘かな」(夕爾) 近江の瀬田の唐橋を詠った作品でしょう。むつかしい言葉も、目を引くような言葉もありませんが、自然詠の中に作者の日常が偲ばれるようで、味わい深い思いがいたします。抒情俳句とは元来そうしたものでしょうか? 作者の心の1ページを飾る作品であればそれで十分なのでしょう。