童子は明かり障子の白むのを待ちかね、だれよりも早く、かけひの氷もまだとけぬころ寝床を力なくはい出し、ひとり本堂に入って本尊の観音像に額ずき祈って、夜来のさびしさは不思議と落ちつき、 (佐藤春夫『極楽から来た』)182
春寒やいまだ届かぬ内定書
「ボクの細道]好きな俳句(1230) 波多野爽波さん。「骰子の一の目赤し春の山」(波郷) 「鳥の巣に鳥が入ってゆくところ」(爽波)。この作品と出会って以来、すっかり波多野爽波さんの作品にとりつかれてしまいました。さて、掲句のことです。なるほど、骰子(さいころ)の「一の目」はたしかに赤いです。が、それと春の山と何の関係が? 読者は???ですが、作者の「取り合わせ」の妙に、読者は、ムムムと感心していればいいのです。