枕する首すじから肩にかけて、またふとんのなじまない足の寒さに、童子さえもすぐに寝つかれない夜が多かった。心の野を横ぎる雲の影のようなものが、夜な夜な睡(ねむ)りにくい童子の小さな心を苦しめた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)176
仏塔を鋭角に切る冬の蝶
「ボクの細道]好きな俳句(1224) 石田波郷さん。「うそ寒きラヂオや麺麭を焦がしけり」(波郷) 昔はラジオでした。その放送に気をとられ、火をいれていた麺麭(パン)を焦がしてしまったというのです。「うそ寒」は晩秋の季語(薄寒きからきた)ですが、その心理的な語感から、作者の無念さが伝わって来ます。