里では聞きなれない鳥が長くなきつづけるのに耳を傾けていると、あたりに見えなくなった甥の姿をたずねて来た観覚が、うしろから肩をたたき、
「どうだ、ここは、気に入ったか」
童子はあどけなくこくりとうなずいた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)112
年の瀬に灯るあかりや蛸薬師
「ボクの細道]好きな俳句(1159) 小枝恵美子さん。「なずな咲くてくてく歩くなずな咲く」(恵美子) なずな畑の中をどこまでも歩いていく作者の姿が思い浮かびます。上五と座五をリフレインさせる作品は少なくありませんが、この「なずな咲く」の自然で素直な繰り返しは楽しくて読者まで幸せにしてくれます。