木魚歳時記

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木魚歳時記 第3391話

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 うろたえはじめた定明は、思いあまってほかに相談する相手もなく、額の傷をはちまきで包んで、また叔父をたよって行くと、律義者の叔父ははじめ顔色をかえて厳しくしかったが、やがて定国の遺した藤原宗輔あての手紙を取り出し、かねて義兄から預かった金子を残らず手紙にそえて定明に渡すと、
(佐藤春夫『極楽から来た』)95

      僧堂の壁に青ざむ火取虫

 「ボクの細道]好きな俳句(1140) 田中裕明さん。「亡き人の兄と話して小鳥来る」(裕明) こうした異次元の時間の流れを作品に仕上げるには優れた感性が求められます(そう思います)。摂津幸彦さんと比べることは失礼かと思いますが、幸彦さんの作品が読者の「心の襞(ひだ)」に触れる思いがするとするならば、裕明さんの作品は読者の「心の底」にストレートに迫る気がいたします。