木魚歳時記 第3376話

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 夫人がまだ三十一の女盛りであったから、こんなうわさも出たのではあろうが、今までの夫人の日常を知る人々にとってはこんな口さがないうわさなどは信じなかったが、それにしても少々腑(ふ)に落ちないと思わないでもなかった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)81

     もういちど兎抱きしめ卒園す

 「ボクの細道]好きな俳句(1125) 摂津幸彦さん。「露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな」(幸彦) 京都に「路地」(ろじ)がたくさんあります。西陣織が盛んな頃には、同じように並んだ路地裏から織機の音が夜遅くまで聞こえていました。そんな路地の軒先に金魚玉が吊るしてあったのでしょう。格子から洩れる灯りの行列を見て、金魚はそれを夜汽車の列とみたのでしょう。