木魚歳時記 第3328話

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 そうして定国が弓削の預所となって再び美作に帰ると預所の成績を上げるためにいままで捨てて置いたやや高いあたりに鋤(すき)を入れてもう一度稲岡に水の分配を交渉し、自分で新しい池を設けようともいったが、稲岡でも今度は応じなかったため、弓削の新田はいつまでも水無なので、定国は天与のものを稲岡が私(わたくし)して国土を荒廃させると常に憤慨していたのを、定明は忘れず父の失踪を叔父の説得にもかかわらず稲岡のせいにするのを庄民一同も定明に同情し同感した。
彼ら一同には定国の純粋な理想主義の夢は一向に理解されず、通俗に現実的な稲岡への恨(うら)みだけが同感されやすかったのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)34

     灼熱のタントラ仏にある渇き

 「ボクの細道]好きな俳句(1079) 能村登四郎さん。「坂があり夕鰺売りの後に蹤く」(登四郎) 「蹤」(あと)と読むのでしょうか? 蹤(つ)くと読むのでしょうか? とするならば、自身が坂道にかかる時、偶然、前を行く鯵(あじ)売りに追いつきその後を追う形となった。折からの夕日に染まりながら・・