木魚歳時記

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木魚歳時記 第3310話

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『お召しだから、おれはもう一度、天子さまにお仕えする。いいや、今日の北面(ほくめん)や院の武者所ではない。もとの天子さまが、北海で龍王になってござっしゃるのだ。そのお召しだからわしは是が非でも波を押し渡って行かなければならない。お前、定明を助けてやってくれ。お前よりほかに頼む人もない。あれにはいま当分のままで、わしに代って預所の仕事をつづけさせ、そのうちに京へ上らせ、この手紙を持たせて権納言様のところへやってくれ。手紙にはくわしく事情を書いて定明のこともよく頼んである。これがわしのお前への頼み、定明への遺言だ』といい捨てたまま、(定国は)ひきとめる間もなく急いで出てしまい、北の庄の方へあとも見返らず、すたすたと行ってしまった。あの嵐の来た日の朝早くのことだ」
(佐藤春夫『極楽から来た』)16 

      月天心虎ともなひし取経僧

 「ボクの細道]好きな俳句(1061) 能村登四郎さん。「風邪衾かすかに重し吾子が踏む」(登四郎) 「衾」(ふすま)とは布で作った夜具のことです。冬の季語となります。風邪を引いて気分がすぐれないのに、臥せっている寝具の上を吾子(あこ)が踏んで通り抜ける。「かすかに重し」に父親の温かみが込められて秀逸です。