木魚歳時記

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木魚歳時記 第3305話

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 (三) それでなくてさえ父の行方を案じて眠れない定明を、二百十日の風は夜もすがら家や周囲の木々をゆるがして悩ました。
 風を避けた地勢を選び建てられたこの家にこれほどの風が騒ぐのだから、風当たりのひどい山中などでは、どんなにかすさまじかろうか。一しきりひどく吹いてしばらくは休み、また勢いを加えて一晩中吹き募っていた。それでいていまにも大降りになるかと思った雨は大して降る様子もない。父はこんな風の中をどこで何をしているのか。定明はこの好天にも鳴いている床の下のこおろぎに聞き入りながら父を案じた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)11

      逃げ水の一つ噂を残しけり  噂(うはさ)

「ボクの細道]好きな俳句(1056) 能村登四郎さん。「春日三球ひとりとなりし朧かな」(登四郎) 春日三球(かすがさんきゅう)とは、1970年代、春日三球・照代(てるよ)のコンビ名で一世風靡した夫婦(みょうと)漫才のことでしょう。コンビの相方が亡くなられた? コンビの残された片方の悲しみを代弁するかのよう詠われた一句なのでしょう。