木魚歳時記 第3304話

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 こうして幾日を経たろうか、一朝、山の木々がすさまじくざわめく風音に目ざえた定明は、起き出でて朝の支度をすまして父を待ったが、いつまでも起きてこない父を怪しみ、行ってみると父の臥所(ふしど)はもぬけのからであった。山の木々はこの日一日中、定明の不安な心のようにざわめきつづけ、夜来の風は吹きつのる一方でいつしずまるともみえないのに、父は行方しれず、日のくれになってもまだ帰ってこない。定明は心細さに堪えないで、ひとりしょんぼり寝床に入ったが、なかなか眠れそうにもなかった。(佐藤春夫『極楽から来た』)10

      穴一つあの世覗きや浮いてこい

「ボクの細道]好きな俳句(1055) 能村登四郎さん。「遠い木が見えてくる夕十二月」(登四郎) こんどは12月です。「遠い木が見え」とは? きっと冬夕焼(ふゆゆやけ)なのでしょう? 遠くの木立が逆光(冬夕焼)の中に美しく映えています(きっと)。ボクも逆光で写真を写すのが好きです。写真技法として問題だとしても、画像に生まれる逆光の「ムード」が好きなのです。