木魚歳時記 第1651話

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    囀をこぼさじと抱く大樹かな   星野立子

 {父がつけしわが名立子や月を仰ぐ}この作品は、立子さんの父親である虚子を月に喩えた清々しい作品です。前掲の「囀り」の作品は、井上やすしさんのことばを借りれば「むつかしいことをやさしく」に該当します。つまり、虚子の立子さんへの愛情も含めて「愛」だとか、「慈悲」だとか、「共生」だとかいわずに、そのことを見事に示されたおおらかな作品です。他にも{午後からは頭が悪く芥子の花}{青麦に沿うて歩けばなつかしき}{大仏の冬日は山に移りけり}などなど秀句がたくさんあります。

      伝説の鬼の棲みたる花の窟