木魚歳時記 第1641話

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   仰山に猫ゐやはるわ春灯   久保田万太郎

 他に{湯豆腐やいのちのはてのうすあかり}{神田川祭の中を流れけり}などの代表句があります。もとより、久保田万太郎といえば日本を代表する小説、戯曲を軸とする文壇の大御所的存在で、むしろ句作活動は余技といえるのかも知れません。掲句が示すように花柳界の遊びは玄人肌でも、反面、家庭事情は不幸なことも多く、これは偶然ながら「湯豆腐」の作品は、咀嚼誤りで咽をつめて亡くなる五日前の作品と伝えられています。

   世の中がどうあろうとも蜆汁