知恩院(ちおんいん)が建ったときのことじゃ。本堂に、童(わらし)が坐っておった。わけをきくと「自分は、昔からここに棲んでいた白狐(びゃっこ)じゃが、本堂が建って棲家を奪われて困っています」と答えたそうな。
「阿弥陀仏と十声となえてまどろまん
長き眠りになりもこそすれ」(法然上人)
そこで、知恩院(ちおんいん)の裏山に、白狐(びゃっこ)の棲家をつくってあげたそうな。翌日、その童(わらし)がお礼にきて「このお寺を守ってあげる」と約束して帰ったそうな。その後、この白狐(びゃっこ)の棲家は、濡髪堂(ぬれかみどう)と呼ばれれ、濡髪(ぬれがみ)が<濡れ紙>に通じるところから、花街(はなまち)の人々から信仰されるようになったそうな。<知恩院:東大路新門前