『うつつゆめもどき』(塚本邦雄)。この本を読んでから、ぼくは<ゆめもどき>のことばを多用します。それはこのことばの魅力にとりつかれたからです。
「かしこく思われる必要なし
かしこくあることのみ必用なのだ」(中野重治)
浮世(うきよ)は、漢語の影響から、平安時代以降「定めない世の中」を意味して物語や和歌のテーマとなります。やがてそれが中世になると仏教的無常観と結びつき<浮き世>と同音の<憂き世>があてられ「はかない」を中心として展開してゆきます。そしてさらに近世になると、どうせままならぬ世なら浮き浮きと楽しくやろう・・と浮世草子、浮世絵、浮世模様などなどへと再転することになります。それでは現代社会における浮世とは?