木魚歳時記 第225話

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新樹晴 どこか歪な 遠近法

 法事のときなど故人の戒名を記して立てられる細長い板が「卒都婆」(そとば)ないし「塔婆」(とうば)であります。古代インドでブッダの遺骨や遺物を中に埋め、そこに土饅頭を盛り、まわりをレンガで固めた「ストゥーパ」(塔)がその起源であると伝えられます。

 わが国においては、本来は仏の遺骨を納めた「塔」も、中国の塔建築の影響を受け、重層の寺院建築様式へと発展してゆきます。そしてやがて、葬祭儀礼と結びつき故人の追福を意図した五輪塔(墓碑)へと変化いたします。

 法事のときに供養する卒都婆(そとば)・塔婆(とうば)の上部を注意して見ると、五つの<切り込み>のあることに気がつきます。これは五輪塔(地・水・火・風・空)の名残であります。ところで、故人の追福を願うとしても、仏事のたびに「宝塔」を建立することはできませんから、ストゥーパ(塔)を建立する代わりに、卒都婆・塔婆を供養する習慣が生まれたのです。

     「姿声 虚々怪怪怪かな 行々子」