木魚歳時記 第115話

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少年は 水母逆さに 砂で描く

大いなる放棄(1)

 仏伝によれば、シッダルタ王子は18歳でヤショダラ妃と結婚し、息子フーラをもうけられます。しかし、約10年後、29歳のとき、突然、王位も、家族も、恵まれた生活のすべてを放棄して「出家」(しゅっけ)の道を選ばれるのです。

 その動機については、すでに述べてきたようなことが背景にあったでしょう。しかし直接の動機としては、シッダルタが14歳のとき遭遇された「四門出遊」(しもんしゅつゆう)の物語が有名です。

 或る日、シッダルタが城門を出ようとされ、東の門で老人の姿を見かけ、二日目に南の門で病人とでくわし、三日目に西門のところで死人と出会い、そして最後の日に、北の門のところで出家者・沙門(しゃもん)とお出会いになった。そして沙門のいいようもないもの静かさと清らかな姿をみて大いに感動された…というのです。