2014-01-13から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第1744話

鼻の話 妻をたいそう愛している夫がいました。その妻は容姿端麗でありましたが、残念なことに鼻だけがすこし低いのが玉に疵でありました。夫もそのことを少し気にしていました。或る日、夫が町に出たとき大変に美しい鼻をした女性と出会いました。そこで無理…

木魚歳時記 第1743話

月を盗る 猿の王がいました。ある晩、月が井戸の底に映るのを見て「月が井戸に落ちた。月が死ぬと世の中が暗くなってしまう。なんとか月を助け出さなければ・・・」。そう考えた猿の王は、家来たちを集め、まず自分が井戸の上の木の枝にぶら下がり、つぎつぎ…

木魚歳時記 第1742話

共命鳥 あるところに、共命鳥(ぐみょうちょう)といって、一つの胴体に頭の二つあるおかしな鳥が棲んでいました。この鳥の一方の頭は、いつも、美味しい果実を見つけるのが上手で満足な気持ちで暮していました。ところが、もう一方の頭は果実を見つけること…

木魚歳時記 第1741話

ヘビの話 おかしなヘビがいました。というのは、ヘビの尾っぽは「自分こそ主人である」。と、そのように考えていました。また、ヘビの頭(かしら)の部分は「自分こそ主人である」。と、そう考えて譲りませんでした。ところで、このヘビが木から下りるとき、…

木魚歳時記 第1740話

カメと白鳥 沼に棲んでいるカメはいちどでいいから海が見たくなりました。そこで沼にいた白鳥に相談をしました。それを聞いた親切な白鳥はカメの尻尾をくわえると海のある方へと飛んで行きました。もうすこしで海が見えるところまで来たとき、おしゃべりのカ…

木魚歳時記 第1739話

ワニと猿 川岸にいたワニが、木の上の猿の王を見てその肝(きも)を食いたくなりました。そこで猿の王にいいました「向こうの岸に渡ればマンゴーが熟れていますよ。わたしが連れて行ってあげましょう」。猿の王はその誘いに応じてワニの背中に乗せてもらいま…

木魚歳時記 第1738話

鵜と鴉 沼のそばに、鵜(う)と鴉が棲んでいました。鵜が、いつも沼に潜って美味しそうな魚をつかまえるのを見た鴉は「鵜と仲良しになれば魚をつかまえる方法を教えてもらえるかもしれない・・」。そう考えた鴉は鵜の家来となりました。そのうち、鴉はとんで…

木魚歳時記 第1737話

豆を落す いざこざが起こり軍を出すか出すまいか王はボサツに相談をしました。ボサツはこんな喩え話をされました。「木の上で豆を食べていた猿が豆を一粒地面におとした。その豆を拾うために両手の豆を手放して木から降り、落ちた豆を探しましたが見つけるこ…

木魚歳時記 第1736話

王の徳 狭い道で二台の馬車が鉢合わせをしました。ところが、どちらの御者(ぎょしゃ)も道を譲ろうとしません。そこで、馬車のご主人さまの「徳比べ」をして、徳の優れた順に馬車が先に行くことになりました。国王の馬車の御者は「相手が強けりゃこちも強い…

木魚歳時記 第1735話

あわて兎 あわて兎の巣穴のところでドスンと音がしました。「大地が壊れたのかも?」。あわて兎は水牛のところに、水牛はサイのところに、サイはトラのところに、トラはライオンのところに、そんな話が伝わり大騒ぎとなりました。ボサツが兎の巣穴のところに…

木魚歳時記 第1734話

兎の施(ほどこし) 猿と、山犬と、獺(かわうそ)と、兎の四匹が仲良く暮しておりました。或る日、ボサツさまが来られることになり、四匹のそれぞれが施(ほどこし)をしようと、猿は木の実を、山犬は獣肉を、獺は魚を、それぞれ獲ってまいりました。ところ…

木魚歳時記 第1733話

悪いワニ ボサツのところに猿がやってきて「水を飲むことができず困っています」という。ワニが池のほとりに棲みついたので怖くて水を飲むことができないのです。なるほど、猿が池の方に向かった足跡はありますが戻ってきた足跡はありません。そこでボサツは…

木魚歳時記 第1732話

縁(えにし) 「縁」(えにし)とは、平たくいえば「ご縁」のことです。仏教用語では「縁起」(えんぎ)と説き、さらにいえば「諸法無我」(しょほうむが)と説きます。つまり「世の中はすべてかかわり合いながら成り立っている」ということです。 「蜂はお…

木魚歳時記 第1731話

空(くう) 「空」 心 明るい人は「そら」と読むでしょう。 心 淋しい人は「から」と読むでしょう。 心 尽(つく)した人は「くう」と読むでしょう。 (新井世子) きのうは子どもを ころばせて きょうはお馬を つまずかす。あしたはだれが とおるやら。いな…

木魚歳時記 第1730話

唯我独尊(ゆいがどくそん) お釈迦(しゃか)さまは、誕生されるや、七歩あゆまれ、天と地を指さして「天上天下 唯我独尊」とおっしゃられたと伝えられています。後世の経典偏者が釈迦の威徳を顕彰(けんしょう)するあまりに誇張したものかと思います。「…

木魚歳時記 第1729話

無知(むち) 怠け者がいた。或る日、池の底に光るものを見つけた。「これは黄金が沈んでいる」そう思った男は池に潜り探したが見つからない。なんどかくり返すうちに、そばを修行者が通りかかった。修行者はその話を聞くや言った、「池の上に枝を伸ばした菩…

木魚歳時記 第1728話

煩悩(ぼんのう) 仲のよい夫婦がいた。或る晩、夫が妻に「蔵からぶどう酒をもっておいで」と頼んだ。妻がぶどう酒を汲もうと甕(かめ)ふたを取ると、中に美人が隠れているではないか。驚いた妻が夫をなじった。そこで、今度は夫が甕の蓋を取ると美男が隠れ…

木魚歳時記 第1727話

生老病死 女が男の子を生んだが間もなく死んでしまう。女は狂乱し、釈迦(しゃか)のところにやってきた。そして、生き返らせてくれという。釈迦は女にいった「いまだ死者を出したことがない家から芥子(からし)の種をもらって来なさい。そうすればあなたの…

木魚歳時記 第1726話

中道(ちゅうどう) 或るところに、沢山の鵞鳥(がちょう)が飼われていた。彼らは、逃げないように羽根を切られ、囲いの中で毎日大量の餌を与えられ、丸々と太ったものから消えていった。ある鵞鳥が考えた「肥えると食われる。食わずにいると死んでしまう」…

木魚歳時記 第1725話

貧者の一灯 貧しい老婆が住んでいた。在る日、多くの人達から慕われている聖者が町にやって来ることを知り、少しばかりの灯し油を寄進したいと考えた。そこで、茶碗に半分ほどの灯油を買い求め、聖者のところに持ってゆき供養した。その夜、町に嵐が襲ってき…

木魚歳時記 第1724話

一休禅師 大徳寺開祖(大灯国師)三十三回忌の大法要をひかえ、前夜、修行僧たちの読経の声を耳にしながら、一休禅師は若くて美しい女性と愛欲の坩堝(るつぼ)にあった。一休禅師には三つの顔があるといわれる。(1)頓知に優れた神童の顔。(2)厳しい修…

木魚歳時記 第1723話

空也上人 京都の神泉苑(しんせんえん)のほとりに老女が住んでいた。空也上人(くうやしょうにん))は、老女が欲するままに、ときおり生臭物などを与えていた。あるとき、老女は乱れてものがいえない。老女がいうには「精気がうちにこもりどうしようもない…

木魚歳時記 第1722話

還愚痴(げんぐち) 浄土宗を開かれた法然上人は「智者のふるまひをせずしてただ一向(いっこう)に念仏すべし」とおっしゃいました。「還愚痴」(げんぐち)、すなわち「愚者(ぐしゃ)の自覚」にもどることが浄土宗を開かれた出発点となります。万人平等教…

木魚歳時記 第1721話

知足(ちそく) 京都の龍安寺に行きますと、方丈(ほうじょう)の一角に<つくばい>があり、底に「吾唯知足」(我れ唯だ足ることを知る)の文字が彫られています。この四文字は、「口」を真ん中に、上下左右に、「吾」・「足」・「唯」・「知」の漢字を配し…

木魚歳時記 第1720話

仏性(ぶっしょう) 浅原才一さんは、浄土真宗の「妙好人」(みょうこうにん)と呼ばれた念仏信者です。才一さんは、往来に寝そべっている犬のそばを捕りぬけるとき犬に手を合わせて通り抜けられたそうです、これを見た人が不思議に思って、才一さんにそのわ…

木魚歳時記 第1719話

驕慢(きょうまん) うぬぼれれは 木の上から ボタンと落ちた 落ちたうぬぼれは いつのまにか また 木の上に登っている (榎本栄一) 「驕慢」(きょうまん)とは、うぬぼれ、おもいあがりのことです。「驕」(きょう)とは、家柄、財産、地位、能力、知識、…

木魚歳時記 第1718話

アシュラ 哲ちゃんの絵には赤の色が多いようです。「アシュラ」の絵も鮮やかな赤色で塗られています。「だって、アシュラさんはがんばると真っ赤になるやんか」。ウンウン。「赤と白を混ぜると肌色になるやろ。なんでや?」。うっ、何と答えていいものか?「…

木魚歳時記 第1717話

地雷(じらい) きれいな花模様のグラスが描いてありました。その横に血を流した女の人が・・哲ちゃんの描いた「地雷」の絵のことです。女の人のことを尋ねると「花もようのグラスを描いていたらな、テレビで地雷が爆発して怪我をした人のニュースが流れてき…

木魚歳時記 第1716話

ビーナス 髪の毛とか、ベール(着衣)が好きです。哲ちゃんの描いた「ビーナス」の絵のことです。「どこから描き始めるのかな?」。哲ちゃんに聞きました。「どこから描いたか忘れた。けど、迷ったらもう描けへん」と返事が返ってきました。即答でした。お母…

木魚歳時記 第1715話

アリのお遍路 「アリのお遍路」の絵には、蟻が虹(にじ)色に塗ってあります。哲ちゃんに尋ねました。「哲ちゃんの描く蟻さんは虹色やなあ、なんでや?」。哲ちゃんの云うには「虹はきれやろ、だからアリさんを虹色にしてあげたの」。「アリさんもお遍路は大…