木魚歳時記

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2014-01-11から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第1664話

螢火のほかはへびの目ねずみの目 三橋敏雄 蛍は卵や幼虫でも光るようです。蛍がを外敵から身を守るために持っている毒素を天敵に知らせるのが目的のようです。もちろん、成虫になってから光るのは求愛行為が目的でしょう。それはともかく、蛍狩りの時に、蛇…

木魚歳時記 第1663話

山深く神と仏と寒椿 村越化石 神仏習合(しんぶつしゅうごう)など難しいことをいわずとも、日本中どこにいっても、お仏壇と神棚が祀られているご家庭が多いようです。掲句は、深山幽谷に分け入ったところ、忽然と古い神社が現われ、脇の小径をたどると見あ…

木魚歳時記 第1662話

影を出ておどろきやすき蟻となる 寺山修司 晩春、突然に春の嵐に翻弄されました。母犬が小犬の愛らしさに溺れ、小犬に必要な「しつけ」(学習)を疎かにしていたようです。集団生活の中で、春の嵐に遭遇した小犬はそれを避けることで身を守ろうとしたようで…

木魚歳時記 第1661話

さんくと・ぺてるぶるぐしかし文語 安部完市 この他に{ぽたーじゅすーぷそして女性名詞}などがあります。アベカンさんの作品は難解? 飛躍しすぎ? けれどもなぜか惹かれるところがあります。有名俳人と比較するなどおこがましいかぎりですが飛躍にかけて…

木魚歳時記 第1660話

老人を閒引けば春の土濡れて 中原道夫 最近、俳句の技法について考えてみる機会がありました。技法という言葉はあまり好きではありませんが、「深いことを愉快に」(井上ひさし)さんの言葉は納得できます。すなわち、笑い・愉快の底に、アイロニイー(皮肉…

木魚歳時記 第1659話

泥鰌浮いて鯰も居るというて沈む 永田耕衣 昔から、学校に行かない子どもはいました。ぼくも小三のとき学校に行かず落第をしました。近くの川で、毎日、泥鰌(どぜう)獲りをして暮らしました。川底の石をのけると、たいていは縞泥鰌が潜(ひそ)んでいまし…

木魚歳時記 第1658話

幼子の歩いてこける花の下 山本洋子 お花見の「陣取り」はなぜ?「陣取り」は誰が?ぼくは、ぼくの子供たちのために「陣取り」をしてあげたでしょうか?さっぱりと記憶に残っていません。仕事にかまけてついつい、といえばウソになるでしょう。ただし、ぼく…

木魚歳時記 第1657話

炎帝に告げよ「あたしは美しい」 竹岡一郎 ギリシャ神話に登場しそうな作品です。ところで、ぼくは、女性の美意識について、何を基準(モノサシ)で測るのか?疑問に思っています。人類社会の中で、女性の美意識が定着した歴史について知りたいと思っていま…

木魚歳時記 第1656話

秋近し旗の余白に字を書くな 池田澄子 お澄さん俳句としては少々辛口かな。それはともかく、国旗?の余白に「Vサイン」の寄せ書き感覚で書き込みをする場面を見かけました。国歌斉唱論とか国旗掲揚の是非を論じるつもりはありません。しかし国旗「日の丸」は…

木魚歳時記 第1655話

石段のはじめは地べた秋祭 三橋敏雄 山手に向かって歩いていると、やがて登り坂となり、突然、寺名を記した碑(いしぶみ)と寺へと続く石段が現れました。と、どこへ行っても見かける風景です。ところで、これを俳句に詠もうとすると、見あげるような石段が…

木魚歳時記 第1654話

山椒魚ついつい山椒魚を生み 池田澄子 山椒魚といえば、井伏鱒二さんの短篇『山椒魚』を思い出します。山椒魚と小エビのユーモラスでペーソスに満ちた「やりとり」がたまらない。さて、掲句は、古生代より天然記念物として残る山椒魚を描いた軽妙な作品です…

木魚歳時記 第1653話

土間に人畳の上に羽抜鶏 岸本尚毅 前掲の{縁側に鶏が歩いて明け易し}(小笠原和夫)の作品と比べると、両作品の味わいは、はっきりと違います。「明け易し」の作品は、飄々と「実相」を描写しておおらかな作品です。一方、掲句は、二物を逆転させて対比す…

木魚歳時記 第1652話

罌栗ひらく髪の先まで寂しきとき 橋本多佳子 このブログでは、超有名な俳句のご紹介はいたしません。その理由はすでに紹介しつくされているからです。しかし、多佳子さんの作品は例外です。それは、ぼくが、伝えられる多佳子さんの生涯に惹かれ、多佳子の写…

木魚歳時記 第1651話

囀をこぼさじと抱く大樹かな 星野立子 {父がつけしわが名立子や月を仰ぐ}この作品は、立子さんの父親である虚子を月に喩えた清々しい作品です。前掲の「囀り」の作品は、井上やすしさんのことばを借りれば「むつかしいことをやさしく」に該当します。つま…

木魚歳時記 第1650話

チューリップわたしが八十なんて嘘 木田千女 この作者は大正13年の生まれ。23歳のとき京鹿子(きょうかのこ)に入会。43歳で「天塚」を結成され主宰となられ、54歳で「狩」同人として活躍されてきたようです。他にも{生きている生きているよと法師…

木魚歳時記 第1649話

おつぱいを三百並べ卒業式 松本てふ子 掲句は、俳句雑誌を読んでいて偶然に見つけた(気に入った)作品です。総数150名くらいの私立女子高の卒業式風景と見ました(ぼくの想像ですが)。ところで、あまり見かけない作者名なので調べましたところ(いささ…

木魚歳時記 第1648話

よく眠る夢の枯野が青むまで 金子兜太 {人体冷えて北東白い花盛り}{暗黒や関東平野に火事一つ}{冬眠の蝮のほかは寝息なし}{狼に蛍が一つ付いていた}いずれも、ぼくの好きな兜太さんの作品です。「俳句には可能なかぎりの自己表現をと願ってきた」。…

木魚歳時記 第1647話

やませ来るいたちのやうにしなやかに 佐藤鬼房 「やませ」は夏の季語です。オホーツク海で発達して三陸沖に至り、東北の内陸部に冷害をもたらすので「餓死風」と呼ばれたようです。山から吹き降ろす「山瀬風」と同義に用いることもあるようですが、季節風と…

木魚歳時記 第1646話

青嵐神社があったので拝む 池田澄子 青嵐は夏の季語です。五月から七月に吹くやや強い風を指します。また、春の風を指す季語に「春一番」があります。気象用語では、立春から数日間の日数を定めて大陸方面から吹く冷たく強い風を指していいます。気象予報で…

木魚歳時記 第1645話

満月の裏はくらやみ魂祭 三橋敏雄 美しく清らかに輝くお月さまも、その裏側に回り込んで見るといろんな出来事があるのかも知れません? 最近、ぼくの身内にちょっとした出来事がありました。そんなとき、ふと、金子みすゞさんの詩を思い出しました。(雀の子…

木魚歳時記 第1644話

削るほど紅さす板や十二月 能村登四郎 まだ電気鉋(かんな)の使われていない時代のお話です。大工さんが、材木を寝かせて、鉋(かんな)を掛ける姿を見かけたものです。カンナ屑が花かつおのようにしゅるしゅると舞うの飽きることなく眺めていました。そし…

木魚歳時記 第1643話

葛の花くるなと言つたではないか 飯島晴子 他に{寒晴やあはれ舞妓の背のたかき}{きつねのかみそり一人前とおもふなよ}{さつきから夕立の端にゐるらしき}。飯島晴子さんには、心の襞(ひだ)に迫るような魅力的な作品があります。つまり、この作者は、…

木魚歳時記 第1642話

みえてきたおたまじゃくしのさらにいる 高田正子 この作品を見て、とっさに池田澄子さんの{ジャンケンで負けて蛍に生まれたの}を思い出しました。なぜなら、井上ひさしさんの「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを楽しく、楽しいことを…

木魚歳時記 第1641話

仰山に猫ゐやはるわ春灯 久保田万太郎 他に{湯豆腐やいのちのはてのうすあかり}{神田川祭の中を流れけり}などの代表句があります。もとより、久保田万太郎といえば日本を代表する小説、戯曲を軸とする文壇の大御所的存在で、むしろ句作活動は余技といえ…

木魚歳時記 第1640話

ごはんつぶよく噛んでいて桜咲く 桂 信子 他に、{窓の雪女体にて湯をあふれしむ}{外套のなかの生ま身が水をのむ}(『女身』所収)があります。作者は関西で句作活動を続けられた女流俳人。しかも美貌。結婚して間もなく伴侶を亡くされ生涯独身を貫かれた…

木魚歳時記 第1639話

はつ夏の空からお嫁さんのピアノ 池田澄子 さわやかな風の中で、お嫁さんの弾くピアノの曲が二階から流れてきます。それを、若い所帯の微笑ましい風景と受とめるか、嫁と姑(しゅうと)にありがちな微妙な関係と受止めるか、それは読者の自由であります。と…

木魚歳時記 第1638話

通信簿金魚に見せてゐる子かな 中田尚子 思いがけなく通信簿の成績がよかったのでしょう。お母さんに褒めてもらっただけでは満足せずに、水槽の金魚にまで、通信簿をひらひらさせてはしやいでいる女の子の姿が浮かんできます。ところで、俳句は、説明は駄目…

木魚歳時記 第1637話

裸の子太平洋の縁歩く 山根真矢 なるほど、渚、海辺、海浜、砂浜、浪打ぎわ・・などなど海辺の砂浜を示す「ことば」は他にもたくさんあることでしょう。しかしそれを「太平洋の縁(ふち)」と表現したのを拝見したのは寡聞にしてこれがはじめてです。一瞬、…

木魚歳時記 第1636話

八月の赤子はいまも宙を蹴る 宇多喜代子 赤ちゃんは手足をばたばたさせます。それが「仕事」のようなものですからいたしかたがありません。そのようすを眺めているといつまでも飽きません。真夏の頃は赤ちゃんといえども暑いことに変わりはありません。しか…

木魚歳時記 第1635話

裸子の尻の青あざまてまてまて 小島 健 お風呂上りなのでしょう。素っ裸のまま逃げ回る幼子のお尻にくっきりと蒙古斑(もうこはん)が。これを「まてまてまて」と言い切るのは、相当な句作経験を積まないとできない芸当だと思います。作者に、それなりの「計…