2013-12-21から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第398話

青梅の 一つ転びて 稚地蔵 「青梅の一つ転んで捨聖」。一年前に作った俳句と同工異曲。むしろ、前の句の方が「切れ味」があり好きです。しかしきつすぎる。「衒い」(てらい)も感じられます。そこで、揚句「稚地蔵」(ややじぞう)といたしました。やさしい…

木魚歳時記 第397話

短夜や 少女羽化する 白蛇伝 羽化とは、蛹(さなぎ)が蝶になることです。その「もの」のもつ願望が昇華して現実となることです。童話『マッチ売りの少女』を連想してください。ところで、小説を俳句に詠むなんて・・・こんなのて許されるのでしょうか? 「…

木魚歳時記 第396話

ほ~さんや 密かに燃える 花石榴 京の町家を、雲水(禅宗の托鉢僧)が、ほ~ほ~と近づいて来ます。京都の人は「ほ~さんがきやはった」といって待ちます。遠くから近づく托鉢僧の錆びた「ほ~ほ~」に、ひそかに心をときめかせた町家娘があったかも知れませ…

木魚歳時記 第395話

竹の子の 左見右見して 皮を脱ぐ 「左見右見」(とみこうみ)という言葉を知りました。「と見こう見」つまり、あっちを見たり、こっちを見たり、の意味です。背筋を伸ばした竹の子が、左右の兄弟を見くらべながら、一枚一枚皮を脱いで成長してゆく・・・そん…

木魚歳時記 第394話

老僧の 背のくぼみや 雨安居 「安居」(あんご)とは、僧侶の雨期研修会のことです。つまり「晴耕雨読」のことです。前に「老僧の後ろに目あり雨安居」を作りました。この句の方が「切れ味」があって好きです。しかし「衒い」(てらい)もあります。ぼくも枯…

木魚歳時記 第393話

五月晴 蜜盗人の さかりける 虎模様は、花虻の一種でしょうか?梅雨の晴れ間をぬって、大好きな蜜をむさぼっていました。俳句を始めてから、写真にも熱中しています。動かない花は比較的に容易ですが、動物、鳥、虫、魚(水中)などはむつかしい。 「恥ずか…

木魚歳時記 第392話

大空は 君たちのもの 燕の子 親燕(前掲)の子がこんなに大きくなりました。風来坊のぼくが、写真を撮りにお邪魔すると、親鳥が心配そうに見ていました。まもなく無事に巣立ってゆくことでしょう。それでは子燕たち・・・もうお目にかかることはないでしょう…

木魚歳時記 第391話

無憂華の 咲きて下界は 梅の雨 摩耶夫人(まやぶにん)は、無憂樹(むゆうじゅ)の花を摘もうとされたとき、右脇から、お釈迦さまが誕生された・・・と伝えられています。無憂華(むゆうげ)が咲いたのを知って、府立植物園(温室)に行きました。外(下界)…

木魚歳時記 第390話

泰山木 咲きて四辺の しづもれり いまのところ、好きな花は、①椿、②睡蓮、③薔薇です。しかし、泰山木の花も、沙羅双樹の花も・・・そうなると、これから、花の名前、形、色香、味?いろいろとチェックしなければ・・・ 「心に迷いあるときは人を咎む、 迷い…

木魚歳時記 第389話

大枇杷を 恐る恐るに 噛みにけり 枇杷は、見かけによらず種が大きいので、無分別にがぶりとやると痛い目にあいます。これはまず妄想の世界のことで、百に一つも起こりえない話ですが・・・目の前に、突然、加納姉妹が現れたとしたら「こつん」とやられても噛…

木魚歳時記 第388話

あの頃は 空白のまま ゆすらうめ ぼくには娘が二人います。あの頃(彼女たちの幼い頃)は、彼女たちに、一体、何をしてあげたのか?さっぱりと記憶に残っていません。つまり、マイホーム・パパとはほど遠い存在でした。そのままお嫁に行ってしまった娘たちと…

木魚歳時記 第387話

菩提樹の 花咲き遠き 悟りかな 写真は中国原産の菩提樹(シナノキ科)で、インド原産の菩提樹(クワ科)とは別種です。お釈迦さまが悟りを得られのは、インド菩提樹の下です。写真撮影に夢中でしたが、お釈迦さまの悟りに触れたような、幸せなひとときでした…

木魚歳時記 第386話

これやこの 左回りの 時計草 時計草が、現実に時を刻むことはありません。ましてやそれが左回り(反対回り)するはずはありません。時計草(写真)を見たとき、ぼくが、そんなふうに感じただけです。鏡に映る自分の姿に「何て、けったいな人間や」。ぼくは思…

木魚歳時記 第385話

無動谷 霊気を吸ひて 山茂る 天から降った水適が地に潜り、太陽に熱せられて、ふたたび水気となって湧きあがります。この循環が、山々を鬱蒼と生い茂らせ、多くの「いのち」を育んできたのでしょう。雨上がりの葛城山を眺め、大自然の営みに感動いたしました…

木魚歳時記 第384話

まっさきに あの男ゐて 行々子 「行々子」(ぎょうぎょうし)とは、葭切り(よしきり)とか、葭雀とか呼ばれる鳥のことです。その鳴き声が「ぎょしぎょうし」と聞こえるので、俳句では「行々子」と用いるようです。一説では、葭の髄を食うので「葭切り」の名…

木魚歳時記 第383話

仏弟子の ここにあつまる 額の花 お釈迦さまが亡くなられたあと、その遺徳を偲んだ弟子達が、お釈迦さまの残された説法の内容を文字・記録に残す作業が始まりました。これを「結集」(けつじゅう)といいます。額紫陽花(がくあじさい)の花を見て、そんなこ…

木魚歳時記 第382話

田植終へ 夜毎の月や 阿弥陀仏 「田毎の月」といいます。田植え時、棚田の一枚一枚に月が映る状況です。一度に写るのは物理的に無理としても、月影が田から田へと移動するのは見られるそうです。 「月影の至らぬ里はなけれども、 眺むる人の心にぞ住む」(法…

木魚歳時記 第381話

河骨の すねかじりける 野鯉かな 「河骨」(かうほね)は、その名前からは想像もできないくらい可憐で芯の強い女、いや花です。どろどろした沼の中でスケベおやじ、いや野鯉に「すね」をかじられても嫌な顔をするでなし・・・河骨は可愛い女、いや花です。 …

木魚歳時記 第380話

小夜ふけて ひとへはふかく なりにけり 「単衣」(ひとへ)は当て字で、本来は「一重」(ひとえ)と書くそうです。いまでは「夏着」を意味します。また「単衣」(ひとえきぬ)と読みますと、王朝時代の公家(男女)のアンダーウエアを意味します。揚句は、夜…

木魚歳時記 第379話

釈迦牟尼や 楝の花の 化身かな 「楝」(おふち)とは、栴檀(せんだん)のことです。「楝の花」は、初夏に、新芽の下辺部に薄紅色の小花をつけます。嵯峨釈迦堂のご本尊(秘仏)は、栴檀の香木で彫られ、インド・中国から日本へ伝来したと聞きました。写真の…

木魚歳時記 第378話

虫一つ 水に追はれて 五月闇 「五月闇」(さつきやみ)は、月の出ない闇夜も、また、梅雨の頃の「昼なお暗い」状況も指します。写真ではわかりずらいのですが、この虫は足が八本ありますから、蜘蛛の一種でしょうか、陰鬱な「五月闇」を嫌って水の中まで逃げ…

木魚歳時記 第377話

土喰って 藁喰って さて親燕 蛙の次は「燕の子」です。イメージはありましたが、さて、営巣の現場を見つけるとなると・・・「ウェブ」の借用はご法度ですから、燕の巣を探して回りました。そしてようやく抱卵最中の燕の巣を・・・子燕が生まれるのを待ちきれ…

木魚歳時記 第376話

のれそれと 姿みせない 雨蛙 蛙の「目借時」(めかりどき)すなわち、恋の季節(2、3月)から、蛙を追ってきました。やっとどこにでも見かけるようになりまし。しかし撮影となると・・・声はすれども姿はみせず。さて「のれそれ」は四国地方の魚の名?と聞…

木魚歳時記 第375話

短夜の 艶夢残れる あさぼらけ 艶夢といっても、若かりし頃の「うつつゆめもどき」とはだいぶんに違います。あの「・・・小便までのいのちかな」。といったようなわびしいものです。でも、雀百までとか・・・ぼくも、こんな(写真の)メッチェンを夢見ていま…

木魚歳時記 第374話

神さまに 尻むけてゐる ひきがへる 神さまとは、写真(左)の「お方さま」のことです。写真(右)のひきがえるは、正真正銘の殿さま(蛙)のオスです。つまり、ぼくのことです。そのぼくが「お方さま」に尻むけるとは・・・でも、ぼくは後ろが見えるので「お…

木魚歳時記 第373話

鼻づらに 虫あそばせて ひきがへる 蟇(ひきがえる)は、穴を掘って陸生する蛙です。ですから、写真の大物は、殿さま(蛙)か、ダルマ(蛙)のメスでしょうか。ともかく、鼻先の虫を喰ってしまわずに、遊ばせている「お方さま」を発見したときは、正直、興奮…

木魚歳時記 第372話

僧院に 電子辞書あり 柏餅 ぼくは電子辞書を愛用しています。大学を退職するとき、ある人からもらった物です。そのころ俳句を始めたので、毎日重宝しています。電子辞書を見て、柏餅が食いたくなりました。 「物には時節あり。 花の開閉、人間の生死、なげく…

木魚歳時記 第371話

ひなげしや 与謝野晶子が 咲いてゐる 与謝野晶子の歌に「ああ皐月 仏蘭西の野は 火の色す 君も雛罌栗(こくりこ) われも雛罌栗(こくりこ)」があります。「こくりこ」とは、仏蘭西(フランス)語で雛罌栗(ひなげし)のことです。沿道に与謝野晶子が燃えて…

木魚歳時記 第370話

一山に 念仏どよもす 法然忌 法然忌は御忌会(ぎょきえ)とも呼ばれ、法然上人のご命日に行われる仏事のことです。一山(いっさん)つまり知恩院を始め全国の浄土宗寺院をあげて法然上人のご遺徳を偲びます。きらびやかな荘厳(しょうごん)で着飾った僧侶た…

木魚歳時記 第369話

春昼の どこも動かぬ 観覧車 堅田シリーズ(吟行)の最後です。琵琶湖大橋の西詰に大観覧車があります。バブルの崩壊とともに遊園地が閉鎖され、大観覧車も動かないままに放置されています。なんだか人間のエゴの縮図をみるようで・・・しかし、一瞬、動くよ…