2013-12-17から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第192話

こほりどけ 昨夜のことの 嘘くさゝ 眼(見る)・鼻(匂う)・耳(聞く)・舌(味わう)・身(触れる)の五根(五感)について触れてきました。残るのは<第六感>「意」(心で感じること)です。これは『最遊戯』のテーマ「心の自由」」にもつながることです…

木魚歳時記 第191話

冱返る 岩に食ひこむ 猿団子 古今東西を問わず、人間は空を見上げて、そこに心を奪われてきました。農作物の出来ぐあいとか、日常の暮らしのすべてが、天候に左右されることは多いものです。しかし、そればかりではありません。それは、空は神々の住むところ…

木魚歳時記 第190話

木下闇 鳥の目もあり 寒施行 <見る>という行為の起源はこうです。大昔、わたしたちの祖先となる<生物>は海に生れました。やがて、その生物の皮膚の一箇所に「光」を感じる斑点ができ、明暗の区別と光の方向を判別するようになりました。そしてこの機能が…

木魚歳時記 第189話

木食の 裾でふくらむ 寒雀 BOSE。これは<ぼうず>と違います。音響メーカーの名前です。そのBOSEから流れる音楽が、喧噪に疲れた神経を癒してくれるのはなぜか?母の胎内で聞いた胸の鼓動とか話し声とか…あのバイオリズム(ゆらぎ)の隠しワザが秘められて…

木魚歳時記 第188話

白飴の 悟空ひねりや 初天神 鼓膜でとらえる空気の振動は、内耳でリンパ液の振動に変わり、それが神経細胞の刺激となって脳に伝わります。こうして<聞く>ことによる情報は集積されるのです。 哲人エピクテトスは「神は人間に耳を二つ与えたが、口は一つし…

木魚歳時記 第187話

こだわりの 紅蓮となりて どんど焼き 白頭鷲の営巣(その2)。母鷲の飛び立ったあと、厳しい現実が待っていました。大きい方の雛が、小さい雛をつつき始めたのです。じゃれあい…そうでもないようです。執拗さと激しさがエスカレートするにつれ、一瞬、いや…

木魚歳時記 第186話

風花に 誦呪妖しきや 閻魔堂 白頭鷲の営巣(その1)。腹をすかせた雛のところに、親鷲が野うさぎを運んできました。親鷲は肉片を細かく噛み裂いて、二羽の雛たちに与えておりました。二羽の雛たちも、かわるがわるその餌にありついておりました。 わたした…

木魚歳時記 第185話

凍鶴や 私語憚るる 夕まぐれ 「自己認識」について。<触れる>とは、皮膚を通して自己と自己以外が接触することです。そのことで、さまざまな情報を取得し、それらを比較して「自己認識」つまり自分自身を知るのです。 自身の、顔や、口や、手足の具合はど…

木魚歳時記 第184話

遠仰ぐ 大三角や 初比叡 自身の「癒し」について。詩人・リルケは「手には独自の歴史があり、手には独自の文明があり、手には独自の美がある。」と書いています。人類は、直立二本足で歩行を始め、そこで自由となった両手を駆使することで、大脳を発達させ文…

木魚歳時記 第183話

三猿も 不寝の一夜 初庚申 古代メソポタミアの時代に、すでに、獣肉の匂いを消すために香木が焚かれたという記録があるようです。また、コーランには「喜びの泉となる少女ファリは、その全身から芳香を放つだけでなく、体全身がビャクダンであった。」との記…

木魚歳時記 第182話

幼子は 「さる」と太めに 筆始 おぎゃ~と息を吸い込み、ふうと吐いて逝く。そのときまで、毎日、23,040回は呼吸します。そのたびに匂いが流れ込みます。 フランス小噺。ナポレオンの睡眠時間は三時間であったとか。ですから眠かったのでしょう、晩餐…

木魚歳時記 第181話

天下和順 日月清明 去年今年 退職のとき「心の自由」を宣言しました。が、そのようにできていません。「心の自由」とは?これを探すためにホームページ(『最遊戯』)を始めました。 わたしたちは、つねに、嗅覚、触覚、味覚、聴覚、視覚、の五感に包まれ、…

木魚歳時記 第180話

親綱や 後ろに目もつ 除夜の僧 オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』には、恋しい男の首を手に入れるファムファタール(妖婦)が登場します。そしてこれは、男性の<悪女願望>の現れとされています。 男性に比べ、腕力やその他に劣勢な女性は、女性特有の武…

木魚歳時記 第179話

値札にも 生計の匂ひ 年の市 蜀山人(大田南畝)は、京都のことを「京風いろは歌」で、ぼろかすにこきおろしています。(へ)へつらい言うて世を渡り。(ほ)欲しがるものは銭と金。(に)似ても似つかぬ裏表。というふうにです。 ぼくは、金銭は欲しがりは…

木魚歳時記 第178話

木枯や 紅白粉の 泣きにくる 昔は「写真を撮ると命が吸い取られる」と考えられていたようです。ぼくは職業柄<遺影>に接する機会が多いのですが、お仏壇の傍に飾られた遺影が妙に生々しく感じることがあります。 とりわけ、若くして他界された遺影を見ると…

木魚歳時記 第177話

鮟鱇の 化けの皮まで 喰ひけり 昔は葬送(土葬)のとき、墓に「土産だんご」と「置きだんご」の二種類を供えたそうです。「土産だんご」は、お浄土へと旅立つ故人の「みやげ」として用意し、「置きだんご」は、故人が、この世に残した者たちへの、今生の別れ…

木魚歳時記 第176話

夕映や 鬼門の空に 冬もみぢ 家康の六男忠輝は、生まれながらに<鬼っ子>でありました。そこで家康はすぐさま忠輝を「捨てよ」と命じたそうです。でも、いくら恐ろしげな顔であっても、父親がわが子に対して、そんなことを思うはずがありません。おそらくな…

木魚歳時記 第175話

大雪や 白夜に融ける 磨崖仏 子どもの頃は銭湯に通いました。番台の向こうの女湯が、まるで極楽の世界を眺めるように、うつつゆめもどきであったことを覚えています。 「銭湯は地域社会の断面を示す場である。そして裸という社会的衣服を脱ぎ捨てた時にあら…

木魚歳時記 第174話

しぐるゝや 足裏目となる 雲母坂 江戸後期の狂言作家、大田南畝(1749-1822)は、また、蜀山人と号し「京風いろは歌」を詠んでいます。その中に、「(の)軒を並ぶる町なかで、(お)おいえさんでもいとさんでも、(く)くるりとまくって立小便。」…

木魚歳時記 第173話

封じ手は およね婆の 大根炊き また、雲古(うんこ)で恐縮です。「微動だにしなかった個体は、やがて塊の角がゆるぎはじめると、つぎに本体がぐらつき、しばらくは抵抗をみせたが、やがてくるりと半回転して闇の中へと消えていった。」(『トイレの怪』より…

木魚歳時記 第172話

やわ肌や 後生大事と 大根抜く 蛇(季語)は俳句でも多く詠まれます。秋蛇、蛇の衣、蛇の殻、蛇穴に入る、(蛇の)穴まどひ…などです。ぼく自身「蛇穴」は見たことがありません。 動物の中には、冬、生命現象を休止して、いわゆる「冬眠」に入る種類がありま…

木魚歳時記 第171話

しぐれつゝ 風の戯むる 裏参道 昔は「いんきんたむし脱腸早よ治せ。」と、みんなで囃しながら遊んだものです。さて、白癬菌(はくせんきん)が、頭に登ると「しらくも」。股間に巣くうと「たむし」。足さきに陣取ると「水虫」となります。ぼくも、昔、この虫…

木魚歳時記 第170話

空リフト 北の童子の 坐りをり 魚には瞼(まぶた)がありません。ですから、眠っているときも目は開いたままです。起きているのか眠ったのか、体の色を見て判別するそうです。また、回遊魚の中には眠らずに泳ぎ続ける魚もあるそうです。 さて、「木魚」(も…

木魚歳時記 第169話

殿は のっぽ猫背の 鉢叩 「おもこ」つまり、想い出の女(こ)については前にも触れました。こんどは「おもこす」について。これは<行為>の終止形ではありません。「~だとばかり思い越す。」つまり<思い過ごす>の省略形なのです。 さて「陰圧」(いんあ…

木魚歳時記 第168話

しぐれつゝ 黙に固まる 珈琲店 「秘色」(ひそく)とは、青磁色のことです。釉(うわぐすり)を使わない陶器時代。窯の素地が灰をかぶり、灰のアルカリと素地のケイ酸が反応してガラス状となりました。陶磁器の誕生です。さらに、燃焼のときの酸素の濃度によ…

木魚歳時記 第167話

ひよ鳥に 少し余して 木の実落つ 「暈繝」(うんげん)とは、赤、緑、青、紫、黄色の五色を基本として、それを三、四段階に塗り分ける、「暈繝雲形」など豪華絢爛(けんらん)な彩色法です。 仏教美術は、ガンダーラから中国に伝わり、陰陽五行の影響を受け…

木魚歳時記 第166話

露寒や 岸辺にもどる 水の声 「変態」とは、もっぱら、その行動が「変な男」。と解されています。しかし、生物学的な「変態」とは、蛹(さなぎ)が蝶に羽化する、つまり、その発達段階のコペルニクス的展開を意味する大自然の現象です。すなわち、卵から幼虫…

木魚歳時記 第165話

待合に 代診とあり 秋の暮 「物の怪」(もののけ)とは、支配者、体制側から葬り去られ、もの陰でうごめく霊・怨霊のことです。また、龍・河童・天狗など、自然への畏敬が生みだした想像上の妖怪を指すこともあります。 かって、小学校を舞台とした「学校の…

木魚歳時記 第164話

暮六つの 外に音なし 虫時雨 野坂昭如さんが書かれた『童女入水』という本には、「遠足は<えんそく>ではなく<えんくそ>である。つまり遠く行って糞(くそ)をすること。」とあるそうです。また「充糞」「約糞」「催糞」など、鬼気鼻に迫ることばを、容易…

木魚歳時記 第163話

一滴に 一音伝ふ 系露の忌 オノマトペ。つまり「ワンワン」「ヒンヒン」「ドッカーン」のように、音が語源にあたる言葉を擬音語といいます。それから「プリプリ」「ペッタン」「だら~ん」など、物の形状が語源となる言葉を擬態語といいます。 さてぼくは、…