2013-12-15から1日間の記事一覧

木魚歳時記 第144話

風狂は 世を斜かひに 火取虫 ぼくの、ぼくによる、ぼくのための自分史である、この『最遊戯』も「第12話」がおわりました。中味は、ロマンと、いちびりと、スケベ、を除いたらなにも残りません。でも、この12回を小誌に仕上げて、ぼくがお浄土に召される…

木魚歳時記 第143話

風狂の 芯から堕ちる 心太 自業自得 その翌日は、天帝の「幡桃勝会」(ばんとうしょうえ)が催されました。準備のため、仙女たちが幡桃園に入り、無残に食い荒らされた桃の木を発見して大騒ぎとなりますが、そのことはさておき… 悟空の行為は、南海の観世音…

木魚歳時記 第142話

炎天や 「エンマ・ソワカ」と 呪文する 不老不死の妙薬 案内の土地神によりますと、幡桃園には、全部で三千六百株の桃の木があり、千二百株は実が小さくて、これを食べると道術が備わり仙人となります。つぎに千二百株は実が大きくて、これを食べると「不老…

木魚歳時記 第141話

夏芝居 わらべ始めの 丸太町 幡桃園 閻魔大王の「齢命簿」に細工をした悟空は、当面、命を永らえることができます。しかしいつ、冥界の帳簿改めがあり、また赤紙令状がくるやもしれません。ずっと気になってきた「不老不死」の妙薬を、こんどこそ探しださな…

木魚歳時記 第140話

炎天や 釘とウソ抜く 通称寺 冥界の騒動 「閻魔大王さま一大事です、毛むくじゃらの雷公がやってきてなにやらわめいております」。司命尊(検事)、司録尊(書記)と酒盛の最中の閻魔大王は「何事ぞ猿一匹ぐらい、すぐに追い返えせ。」と激怒いたします。「…

木魚歳時記 第139話

炎昼の 動画シーンや えんま堂 閻魔大王 さて、悟空は女妖怪とも仲良くなり、水連洞に戻り玄猿たちと暮らすうちに、はや四、五年が過ぎます。ところが或る日のこと、とんでもないことが起こりました。それは、幽冥界の閻魔大王から「赤紙令状」が舞い込んだ…

木魚歳時記 第138話

裾ラッパ への字への字の 三尺寝 問答での決着 悟空と妖怪の勝負は着きません。この妖怪は天界に棲む蜉蝣(かげろう)でしたが、天帝の寵愛を裏切り森番と不義をし、下界に追われ白蛾の精になって、琵琶洞に棲みついて若猿たちを誑かしたり、塩漬けにして食…

木魚歳時記 第137話

端居する 微妙な二匹 猫と夫 女妖怪と勝負 さて、若猿たちを<猿の塩漬>にした女妖怪たちを退治するため、悟空は如意棒をひっさげ、ふたたび琵琶洞に乗り込むことにいたしました。 「姐さん、老猿がきてなにやらわめいております」。と、桃尻が女親分に報告…

木魚歳時記 第136話

やきしもの 裏で縮かむ 鱧の皮 琵琶洞を偵察 そこで悟空は<きん斗雲>に乗り、琵琶洞へと偵察にやってまいります。入り口に桃娘が番をしていますので、悟空はハエに変身して、岩戸の隙間から洞窟に潜り込むことにしました。 「あの猿の坊やたちはどうしたの…

木魚歳時記 第135話

老僧の うしろに目あり 夏安居 琵琶洞の妖怪 戻った猿の話では、四、五十里も行くと<琵琶洞>と記した洞窟があり、そこに「白い蛾が、翅をひろげて待っています。」と、張り紙がしてあったそうです。 いちびりの若猿たちが飛び込むと、うるわしの笙歌(せい…

木魚歳時記 第134話

滴りて 京のとうふの 柳腰 猿の塩漬 さて、花果山に戻った悟空は、楽しく玄猿たちと暮らすうち、はや四、五年がたちました。 ところで最近、不思議なできごとがあります。それは、四、五千匹の玄猿の数が、めっきり減ってきたのです。調べてみると、威勢のい…

木魚歳時記 第133話

七夕や 一か八かの 受送信 如意棒 花果山に戻った悟空は、玄猿たちと再会を喜びます。 さて、きん斗雲、遁身(とんしん)はもちろん、天に登れば地をくぐる。水が平気で火に焼かれない…いやはや、七十二般の術をあやつる悟空の噂は、たちまち、傲來国(ごう…

木魚歳時記 第132話

滴りて 滴りてなほ 大悲かな 花果山に帰る 「補陀落(ふだらく)に悟空あり」と、すっかり有名になった悟空でありますが、頭から消えないのは、やはり「不老不死」のことです。 禅師に尋ねると、なんでも、天帝の催される幡桃(ばんとう)会の催しがあって、…

木魚歳時記 第131話

葉隠に 瘤と角もつ 花石榴 分身の術 <身替りの術>。悟空と混世魔王が勝負したとして。魔王が松ノ木に化けるや、悟空は樵に変ってその木を倒す。魔王が小魚に化けて水に潜れば、悟空は翡翠(カワセミ)と変わって、そのあとを追う…といった変化自在の術のこ…

木魚歳時記 第130話

老鶯の 一啼冴えし 山こだ <きん斗雲>の術 その夜、弟子たちが寝静まったころ、悟空は禅師の寝所に忍びます。それというのは、禅師が居間に籠られたのは、悟空に「独りで尋ねておいで」と、ひそかに暗示されたことを察したからです。 禅師の寝所からは明か…

木魚歳時記 第129話

滴りて 炎青めく 不動尊 禅師怒る さて、禅師の弟子となった孫悟空は、昼は、掃き掃除に田畑を耕し、花や木を育て、たきぎを集め、水を運んで過ごします。そして、夜になると弟子たちが一緒に、禅師から儒家・道家・釈家・墨家・医家・降聖(かみおろし)の…

木魚歳時記 第128話

竿頭に 只管打坐する 青蛙 孫悟空(そんごくう)となる 美猴王が「不老不死」の術を学ぶため、たずねてきた神仙とは如何なる人物でありましょうか。 仙童に案内されるがまま洞窟に入ると、そこはずっと奥まで、楼閣と宮殿が重なり、また部屋部屋もいっぱいあ…

木魚歳時記 第127話

かめ眠り 螢わきだす 椿山荘 三星洞 さて、補陀落(ふだらく)山にたどりついた美猴王であります。その景色の美しいこと、それは「天下に景たり…」がぴったりですがそのことはさておき、さっそく「不老不死」を修めたという神仙の棲家を探すことにしたのです…

木魚歳時記 第126話

訪れは 雨だればかり 額の花 補陀落(ふだらく)へ 数日して玄猿たちは、仙酒、仙肴に珍味を並べ、香薫を焚き、瑤草(ようそう)奇花を飾って酒宴を催しました。したたか呑んで騒いで夜を明かしました。 明くる日、さっそく美猴王は果花山を下り、家来の玄猿…

木魚歳時記 第125話

聞法の 百菩薩あり 額の花 美猴王涙する 春は花花眺めては飲み、夏は果物盛って食らい、秋は芋栗採って腹満たし、冬は黄精(薬草)煎じて気を養う。…といったぐあいに、まことに美猴王は楽しんで暮らすうちに、はや、四、五百年が過ぎました。 その日も大勢…

木魚歳時記 第124話

祭見の 群れ太らせて 牛車かな 美猴王(びこうおう)となる さて、天地の霊気と日月の精華をうけ、そして生まれた石猿ですが、そこいらの玄猿(くろざる)ちがい、たいした優れ者でした。 昼は、花果山を達者に歩き、飛びはね、草木を食らい、流れや泉の水を…

木魚歳時記 第123話

卯浪わけ 浦島還る 伊根港 石猿誕生 さて、水廉洞(すいれんどう)に大きな玄石(くろいし)があり、或る日、これが、天地の霊気と日月の精華をうけ、心が通いあったのでしょうか、たちまち胎内に<仙胞>を宿したのでございます。 やがて、この玄石は裂ける…

木魚歳時記 第122話

山車の ベンツと並ぶ 交差点 花果山(かかざん) この傲來国(ごうらいこく)に花果山があり、山巓(さんてん)高く聳え、丹色(にいろ)の断崖に奇岩ならび、霊松風を孕んで厳か、と、まことに絶景を誇っております。 さて、花果山の中腹に「睡廉洞」(すい…

木魚歳時記 第121話

狎者や 内裏に巣くふ 蟻地獄 天地開闢(かいびゃく) さて混沌(こんとん)は四、五千年とつづき、やがて、天の気は下降し、地の気は上昇し、天地交合して、水となり火となり、山となり石となり土となります。 須弥山(しゅみせん)世界は、東の東勝身州(と…

木魚歳時記 第120話

黒牛の めらと練りだす 加茂祭 悟りへの道(3) 「生・老・病・死」を、自分自身の問題として考え、そして悩んできた。しかし、ひとたびこれを客観的に考えるならば、それは、さまざまな<条件>のかかわりで「生」を受け、日々刻々の<時の流れ>の中で「…

木魚歳時記 第119話

一隅に 伸るか反るかの 芥子坊主 悟りへの道(2) 悩み(生・老・病・死)を、「禅定」により解決することを断念された釈尊は、二人の仙人のもとを辞し、ナイランジャイナー河(尼連禅河・にれんぜんが)のほとりにある苦行林に入られます。 そのころの苦行…

木魚歳時記 第118話

坂上に 異人館かな 鯉幟る 悟りへの道(1) シッダルタは29歳で、すべてを放棄し、沙門(修行者)として出家されました。つまり、ゴータマ(釈尊・釈迦族の尊者)となられたのです。この時代の沙門の修行方法には二つのタイプがありました。一つは「禅定…

木魚歳時記 第117話

底ひより 鯰くりだす 印旛沼 大いなる放棄(3) 釈尊は、後日、このように述懐しておられます。「出家・乞食(こつじき)の生活に入るのは、誰に強いられたからでなく、もろもろの怖れからでもなく、財貨の苦しみからでもない。それは、生・老・病・死に対…

木魚歳時記 第116話

盛飯と 汁と嬶と 五月蠅 大いなる放棄(2) 後に、釈尊は在家時代を回顧して、このように述懐しておられます。「自分もまた老いることを免れないのに、他人が老衰したのを見て、嫌悪し、恥ずかしいことと思い、悩み、考え込んでいた」と。 人間、おぎゃ~と…

木魚歳時記 第115話

少年は 水母逆さに 砂で描く 大いなる放棄(1) 仏伝によれば、シッダルタ王子は18歳でヤショダラ妃と結婚し、息子フーラをもうけられます。しかし、約10年後、29歳のとき、突然、王位も、家族も、恵まれた生活のすべてを放棄して「出家」(しゅっけ…