木魚歳時記 第3635話

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 この師匠の勉強のすさまじさと業を授けるに当たってのきびしさとは、言外に少年をはげましむちうつものがあって、少年は師匠の情熱的な性格と強い気魄(きはく)とに打たれ、自然と頭のさがる思いがした。
 三大部はみなそれぞれに有益に面白く読まれたが、中でも少年をもっとも夢中にしたものは、やはり『摩訶止観』であった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)336 

       煤逃げや妻が神棚拭いてゐる

 「ボクの細道]好きな俳句(1386) 安住 敦さん。「雁啼くやひとつ机に兄いもと」(敦)ボクには妹がいません。ですから、揚句のような「兄いもと」の実体験はボクにはありません。もし、妹がいたら(宮沢賢治さんほどでなくとも)大切に思いたい! そしてボクのいうとおりにする妹であってほしい! そんなにうまいことは起らないしょうが(汗)。

 

 

 

 

木魚歳時記 第3634話

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 燭(しょく)を秉(と)って夜遊ぶのは青春の人のこと、老いて燭を剪(き)って夜も勉めなければならないと、起きればすぐ机に向かう皇円は夜も寸陰を惜しんで筆を執っていた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)335

      煤払どすんと落つる僧の妻

 「ボクの細道]好きな俳句(1385) 安住 敦さん。「初電車子の恋人と乗りあはす」(敦)「子の恋人」とは息子の恋人のことでしょう! わかりますそんな時の華やいだ心の内が! 新年の電車ですから、なおさら雰囲気は最高でしょう。ボクも今でも、バスや地下鉄に乗る時、素敵なメッチェンと乗り合わせてないか? 周囲をキョロキョロ眺めたりしています(汗)。

 

木魚歳時記 第3633話

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 皇円はその卒業を早くさせたいというのか、少年をして、『止観』は北琉先達房俊朝に、また『玄義』は今までの師源光に、そうして皇円自身は『文句』を、とこう分担して業を受け学ばせた。少年が他の師から学んでいる間を、皇円自身はいつも、ものにつかれたように休みなく執筆していた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)334

      秋風や石につまずく御尊体

 「ボクの細道]好きな俳句(1384) 安住 敦さん。「くちすへばほほづきありぬあはれあはれ」(敦) 可憐な(幼少)の年頃の「ほおずき遊び」のしぐさでしょうか? れとも抱擁のシーン? それにしても「あはれあはれ」がわかるようでわからない。それはともかく、もういちどこの年頃にどりたいことは間違いありません。

 

木魚歳時記 第3632話

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 みなこの道の古典として知られたもの、わけても『摩訶止観』は大師が己証(自ら証明した)法門を弟子潅頂(かんちょう)の録したもので、これにより天台が成り立つという程のものなのである。
(佐藤春夫『極楽から来た』)333

  「近詠」
       野仏に一つ石つむ暮の秋 

 「ボクの細道]好きな俳句(1383) 安住 敦さん。「甚平着て女難の相はなかりけり」(敦) ほんとうに好人物はいるものです。でもわかりませんよ、女難だけはいつどこでふりかかるか! 甚平など似合う殿方は女性にもてるからです。その反対に、むっつり「しんきくさい」だけの某氏Sなどは、まったく、女難の相とは無関係です(汗)。

 

木魚歳時記 第3631話

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(三)皇円が新入りの弟子たちに読むことをすすめた三大部というのは、天台大師智者(てんだいだいしちしゃ)ともいわれる智顗(ちぎ)<中国南北朝時代、438-597の人>の著述で、『妙法蓮華経玄義(もうほうれんげきょうげんぎ)』十巻『妙法蓮華経文句』十巻『摩訶止観(まかしかん)』十巻のことで、
(佐藤春夫『極楽から来た』)332

       金婚の妻へ捧ぐ
        湯豆腐や百年分のありがたう
                   「ブログ句集」おわり

 「ボクの細道]好きな俳句(1382) 秋元不死男さん。「ひらひらと猫が乳呑む厄日かな」(不死男) 小猫が乳首を押しながら乳を飲むのは本能です。それを「ひらひら」と表記したところが秀逸です。ところで「厄日」(やくび)は季語として用いられていますから,二百十日(台風)を指すのでしょう。

 

木魚歳時記 第3630話

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 山上の晩秋は、寒冷の気の身にしみる十一月の朝、身も心もひきしまる思いで、少年は西塔北谷から東塔西谷の功徳院に身を寄せた。
(佐藤春夫『極楽から来た』)331

      秋風やあとかたもなき会葬者

「ボクの細道]好きな俳句(1381) 秋元不死男さん。「白飯に女髪かくれて四月馬鹿」(不死男) さて、むつかしい。「女髪」(めがみ)と読み、女神(女房)と掛けたか? 古来「女の髪の毛には大象も繋がる」といいます。ともかく、世の中、女房と三度のごはんがあればそれでよし。くれぐれもそれらが四月馬鹿と化さないように!

 

木魚歳時記 第3629話

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 こうして一たび相見るに及んで、この老人と少年とは宿縁の催すものがあってか、互いに心の相通じるものを感じたらしく、快く愛と敬とを取り交し合った末に少年の入門もかなった。
(佐藤春夫『極楽から来た』)330

      病葉の己が内なる寂光土  病葉(わくらば)

 「ボクの細道]好きな俳句(1380) 秋元不死男さん。「火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり」(不死男) 昔は、七輪(しちりん)、カンテキ(関西)つまり、土製の焜炉(こんろ)に炭を燃して秋刀魚(さんま)を焼いたものです。団扇(うちわ)で風を送り秋刀魚の焼け具合を加減したものです。真っ黒に焼けたサンマで熱ごはん食すのは最高でした。