木魚歳時記 第3141話

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 「今日のことば」
      (木も鳥も声をそろえて)
    おつきさんおつきさん まんまるゝゝん
    おほしさんおほしさん ぴかりぴりるゝん
    かしははかんかの かんからゝゝん
    うくろはのろづき おつほゝゝゝゝゝん。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)19

 「ボクの細道」好きな俳句(890) 川崎展宏さん。「炎天へ打つて出るべく茶漬飯」(展宏) 展宏さんの俳句は飄々とした俳諧味が持ち味です。この炎天のさ中に、いったいどこに出かけるというのでしょうか? はやりの「浮気」「不倫」の類ではない。親の仇うちでもない。しかし、相当の覚悟で出かけることだけは確かです。そうか「打ちに出る」と読めば、いつもの囲碁(いご)仲間の処に出かけるのかも? 

        聖堂に迷い込んだる蟇  

                    蟇(ひきがえる)

 

木魚歳時記 第3140話

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 「今日のことば」
     (ふくろふがみんなで)
    のろづきおほん、
    おほん、おほん、
    ごぎのごぎおほん、
    おほん、おほん。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)18

 「ボクの細道]好きな俳句(889) 摂津よしこさん。「穴掘りに一人は穴に大西日」(よしこ) 「穴掘り」とは? 道の補修かなにか、重機を使わない二人一組の小さな作業なのでしょう。ひとりは穴の中の土を掘り出し、あとのひとりがそれを地上の車に運ぶ。折から真夏の西日が遠慮なく照りつけ、暑そうなこと・・ショベルカーのような重機の無い時代の作品です。

      やい蛙あるなら臍をだしてみろ

                 蛙(かわず) 臍(へそ)

木魚歳時記 第3139話

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 「今日のことば」
      (つづけて)
    そのくらやみはふくろふの
    いさみにいさむものゝふが
    みゝずをつかむときなるぞ
    ねとりを襲ふときなるぞ。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)17

 「ボクの細道]好きな俳句(888) 大島早苗さん。「大夕立土の匂ひの走りけり」(早苗) 子どもの頃を思い出します。夕立が来ると、お寺の境内(けいだい)に水の流れが出来「土の匂い」がどっと押しよせました。そんな時いつも「これで夏が来た」と、感じたものです。ボクの子どもの頃は、まだ舗装が少なく、夕立の連れてくる「土の匂い」は、たまらなく好きでした。

        やることが山ほどたまり心太 

                    心太(ところてん)

木魚歳時記 第3138話

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 「今日のことば」
      (ふくろふの大将が)
    からすかんざゑもんは、
    くろいあたまをくうらりくらり、
    とんびとうざゑもんは
    あぶら一升でとうろりとろり、
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)16

 「ボクの細道]好きな俳句(887) 西田弧影さん。「一燈を点し一堂さみだるる」(弧影) 昼日中から薄暗い(おそらく地蔵尊を祀るお堂でしょうか)お堂に、灯明(一灯)をお供えして祈願する人影があります。何事か願い事があり、お堂に参ることを日課とされているのでしょう。おりから、外は、五月雨(さみだれ)の足音がひときわ激しさを増してきたようです。

       ダメよダメぜつたいにだめ蟇 

                  蟇(ひきがえる)

 

木魚歳時記 第3137話

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 「今日のことば」
      (たくさんのふくろふが)
    のろづきおほん、のろづきおほん、
    おほん、おほん、ごきげんのおほん、
    おほん、おほん、
    するする出てきて、柏の木にとまりました。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)15

 「ボクの細道]好きな俳句(886) 橋本栄治さん。「室町の百足屋にゐる走り梅雨」(栄治) 「百足屋」(むかでや)が何を商いとするお店なのか? それはわかりません。しかし、室町は、昔から、呉服物を扱う老舗が軒を並べていました。おそらく呉服にかかわる雑貨をあつかうお店でしょうか? しめり気を嫌う商品を商うお店ですから梅雨に長居をされては! ともかく「百足屋」という屋号が読者を心地よくさせてくれます。

       毛虫這うさて眼耳鼻舌意

                  眼耳鼻舌意(げんじびぜっしんに)

 

木魚歳時記 第3136話

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 「今日のことば」
     (そのまたとなりの柏の木が)
    清作が、納屋にしまつた葡萄酒は
    順序たゞしく みんなはじけてなくなつた。
    わつはつはつは、ホツホウ、がやがやがや・・
    九とうしやう。マッチのメダル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)14

 「ボクの細道]好きな俳句(885) 大高 翔さん「妻といふ翼ひらけば青嵐」(翔) この「青嵐」(夏季)とは? (妻が居直れば)たいてい、一騒動が起こるものです。「それならわたしはどうなるのよ!」。と、そこまで行き着く前に、なんとか「はぐらかせる」ことに成功するのが、男性たる輩(やから)の「地力」というものでしょう。そうです、妻が、いったん、翼(つばさ)をひろげて飛立つてしまうと、古巣にもどるんことはなかなか・・

        縁側に吊るし見るだけ金魚玉

木魚歳時記 第3135話

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 「今日のことば」
     (そのとなりの柏の木が)
    清作は、葡萄(ぶだう)をみんなしぼりあげ、
    砂糖を入れて 瓶にたくさんつめこんだ。
    おい、だれかあとをつゞけてくれ。
    ホツホウ、ホツホウ、八とうぶりきのメダル。
     (宮沢賢治「かしわばやしの夜」)13

 「ボクの細道]好きな俳句(884) 池田澄子さん。「青嵐神社があったので拝む」(澄子) 池田澄子さんの作品は「あっけらかん」として楽しい。神社は、日本中のどこにでもあります。それも、小さくてひっそりと人影のない神社が大半です。青嵐の吹き下ろす山裾に、そんな鄙(ひな)びた神社があったので拝んでから通りすぎた。ただそれだけの俳句です。俳句とはそんなもの(と思います)。

        蟇蛙つかみたちまち虫垂炎 

                  蟇蛙(ひきがえる)